竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

複素積分をぱぱっと part1:複素微分(コーシーリーマン方程式/複素偏微分)

このコラムでは複数の記事にわけて複素積分の大枠を解説していき、最終的には下のようなディリクレ積分と呼ばれる有名問題を解いていきます。

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実はこの問題は複素積分を使わないと解くのはだいぶ難しく、エレガントな発想を必要とします。この積分複素数で解くためには複素積分を理解する必要があるのですがそのために今回は複素関数微分を見ていきます。

 

【目次】

 

微分可能とは

複素関数の場合の微分可能を実数関数の場合(高校で習うやつです)から自然に拡張して定義します。つまり、x(実数)→z(複素数)と変えて、

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という極限が存在するなら、複素関数f(z)はzにおいて微分可能と定めるのです。

このように、極限の存在が微分可能性を示しているわけですが、大抵の場合は極限が本当にあるのかなんて確かめるのは至難の業です。なぜならzへの近づき方は複素平面上で無限に存在しているからです。

そこでこの極限の存在性と同値でかつわかりやすい条件を導入します。それがコーシー・リーマンの方程式です。

 

コーシー・リーマンの方程式

まずは

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となるように実数関数u、vをおきます。そのuとvを用いて、

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という式を考えるのですが、この式をコーシー・リーマンの方程式と呼びます。これは「f(z)がzにおいて微分可能であること」と同値関係であることが知られています。以下ではこのことを証明していきます。

【PROOF】

微分可能⇒コーシーリーマン方程式」を示します。ここで注目するのは、微分可能であるならば次の2つのルートで近づいていく極限はそれぞれ同じ結果である」という点です。

(簡単なケースを特別に考えることで必要性を示すという発想ですね。)

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それぞれのルートで微分の定義式を計算すると、まず赤線に沿って近づくときは、

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同様に、青線に沿って近づくときは、

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微分可能性より、二式の値は等しいので、

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となることが分かりますから、コーシー・リーマンの式の成立は必要であることが示されました。

次に「コーシーリーマン方程式⇒微分可能」を示します。

このことを示すには、コーシー・リーマンの式が成立するときに、微分の定義式がきちんと極限を持つことを示せればよいです。実際に微分の定義式を計算していくと、

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式が長いので、まずは①の分子だけ考えていきます。(以下O(…)という関数はランダウの記号として使っていきます。)

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同様に、②の分子は、

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以上より、①+i②は、

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となります。(上式での赤字部分がコーシー・リーマンの方程式を適用しているところです。)以上より、

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となりますので、確かに③式は極限を持ち、f(z)は微分可能であると示されました。

これで証明は完了です。■

 

 

複素偏微分

次は複素偏微分と呼ばれるものを紹介いたします。まずは、zとzの複素共役を用いれば、

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のように、x、yを表すことができます。するとf(z)は、

 

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のようにzとその共役の関数と見做せるので、それぞれで偏微分すると、

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となります。ですので複素数偏微分演算子は、

 

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と定義するのが自然です。これを複素微分と呼びます。

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であることから、コーシー・リーマンの方程式は、

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というシンプルな形に表せます。よかったですね。

 

これで複素関数微分については大体OKです。

 

次回は複素積分についてみていきますのでどうぞご覧ください。

 

続き:

 

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