読めばわかる一般相対論part7(ビアンキの恒等式)
今回でいよいよ一般相対論の準備が完了します。
まずはヤコビの恒等式というものを紹介して、それの応用バージョンとしてビアンキの恒等式が成立することを確認します。
《ヤコビの恒等式》
という演算を定めます。
この演算がもしも、
という式を満たすなら、「この演算方法はヤコビの恒等式を満たす」と言います。
この演算の特殊なヴァージョンとして、
を考えます。果たしてこの時はヤコビの恒等式は満たされるのでしょうか。(満たされるから紹介しているわけですが)
さっそく展開すれば、第一項は、
他の項も同様にすれば計算できて、
となります。
というわけで、このケースではヤコビの恒等式を満たすことがわかりました。
の時はヤコビの恒等式をみたしますので、ヤコビの恒等式の左辺に右からベクトル成分Aを掛け合わせても、結果は0に変わりなくて、
のように第一項は計算されます。ここで④はなかなか大変そうですから、単独で計算していくこととします。▽Aは上と下に添字が一つづつ付いたテンソルですから、より一般化して、
を考えていけばよいでしょう。共変微分の決まりに従い展開すれば、
となります。ここで④‘を考えた時に打ち消しあって0となるであろう項にはエメラルドグリーンのラインを引いておきました。
すると結局、
となり、⑤に適用して、
が分かります。
ですからヤコビの恒等式の左辺は、(他の2項も同様にして、)
と計算されます。
最後に、上式は0となるわけですが、それは⑥、⑦の値がなんであってもよいわけですから、
が常に成立しているのだとわかります。
実はこの2式のうち上側が今回導きたかった、ビアンキの恒等式と呼ばれるものです。
これでようやく一般相対論の準備は完了です。
次回は一般相対論の基本原理を見ていきます。
もしよろしければご覧ください。