竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

複素積分をぱぱっとpart3(ストークスの定理/グリーンの公式/コーシーの積分公式/コーシーの積分定理)

今回は複素積分する際に役立つ(役立つのはもちろん今後の議論のかなめとなる)公式として、コーシーの積分公式とコーシーの積分定理を見ていきます。(この二つが名前は似てますが一応別物です)

 

ストークスの定理

 

ベクトル解析の分野でストークスの定理というものがあります。これは非常に使い勝手が良く、物理現象を解く時にも使ったりしますし、今回も使っていくのでここで紹介します。

 

THEOREM1:ストークスの定理

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これを示していきます。まずは下のような平面内の微小長方形で考えます。

 

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この時ストークスの定理の左辺は、

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(注1;最後にdxdyでくくり、くくった中はdx、dy→0の極限を取ることを見越して荒く式変形しているから等号は近似的に成り立っているだけで厳密ではない。厳密にやるなら1次の微小項まで展開して、それ以上の項は2次以上の微小項としてランダウの記号で表して計算して、最後に極限を取った時にそれらの項が0になることを示せばよい。)

 

です。次に微小長方形が2つ隣り合う時を考えます。

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上図に示す通り、2つの長方形の境界部分での線積分は打ち消しあって0となります。そこで、平面内にある任意の図形にこのことを適用するために、下のようにピクセルに分けます。あたかも植物の細胞のようですね。

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この時も上と同様の理由で内側の線積分は打ち消しあって0で、結局外側の線積分のみが残ります。上図で区切ったピクセル全てに、初め微小長方形で考えた時の式を代入して、それらの和を取り、最後にピクセル全てが0になる極限を考えると、

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となり、示したい式が出てきます。

これまで平面上の図形で考えていましたが、立体図系に対しても同様にピクセルで近似すれば良いので、ストークスの定理は平面内に限らずに成立することがわかります。

これで証明完了ですね。

 

《グリーンの公式》

ストークスの定理で特に2次元のケースを考えます。この時、

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ですから、これを代入して、

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がすぐにわかります。

このストークスの定理2次元ver.をグリーンの公式と言います。

 

《グリーンの公式複素数ver.》 

 

次にグリーンの公式は実は複素積分のvarsionもあって、

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が成立することを示します。

展開して実部と虚部に分けていきます。

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一方、

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最後にグリーンの公式を適用すれば、

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ですので、

(左辺)=(右辺)

となり、証明完了です。

ずいぶんまとまりが良くなりましたね。

これと正則の定義を合わせると次のコーシーの積分公式がわかります。

 

《コーシーの積分定理》

THEOREM2:コーシーの積分定理

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これの証明はグリーンの公式複素数ver.をそのまま用いて、

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となります。

 

 

《コーシーの積分公式》

THEOREM3:コーシーの積分公式

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右辺にグリーンの公式複素数ver.を適用させて示すという方針でいきます。しかし点zでは被積分関数が正則ではないため素直に適用することができません。そこで点zを含まないが元の領域Dに限りなく近い領域Cを下のようなエノキ型の回避ルートを作って考えます。

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ルートの名前を下のように定めます。

円周のルート(エノキの先っちょ)は時計回りとします。

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ここでルートl1とルートl2の線積分は、両者が限りなく近づく極限を取ったときにはキャンセルして0になります。なので初めから考えないことにします。こうして仕舞えば領域Cにおいてグリーンの公式複素数verを適用して問題ありません。すると、

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となります。左辺について、ルートを分割すると、

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l1とl2については先ほど述べた理由から無視して良いので、

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となります。最後にε→0としましたが、これはεがどんなに小さい整の数でも構わないので大丈夫です。結局、

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となり、示せました。

 

この証明で用いた、「正則にならない不都合な点をエノキ型の回避ルートで回避する」考え方はこの後もよく登場する大切なapproach方法です。

 

 

《コーシーの積分定理からわかること》

最後にコーシーの積分定理を用いて積分経路を変える方法を見てみます。

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もうひとつ、

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が成り立ちます。コーシーの積分定理からすんなりと導けてしまいますが、こちらも使用頻度が高く大切なものです。



以上でコーシーの積分公式、コーシーの積分定理については完了です。次回は複素関数の冪級数展開とローラン展開を見ていきます。よろしければご覧ください。

 

今回の続きです。

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