竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

複素積分をぱぱっとpart4(テイラー展開/ローラン展開/特異点の分類)

今回は複素関数を冪級数に展開していくことを考えます。冪級数展開の仕方は2通りあり、大雑把に言えば、

 

  展開の中心で関数が正則→テイラー展開

 

  展開の中心が正則でない→ローラン展開

 

と使い分けます。順に見ていきましょう。

 

テイラー展開

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点の位置関係を図にすると、

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となります。まず示したい式を書いてみます。

 

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これはコーシーの積分公式

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に似ていますね。(類似箇所を青い四角で囲ってみました。)

 

そこで、①から示したい式を作っていくことで証明を試みます。つまり、

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のような式変形を目指すわけです。そのためには、

 

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という等比数列の和の公式を思い出します。ここで、

 

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を用いています。これを用いれば①式は、

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となり、示せます。ただし途中でインテグラルとシグマを交換していることに注意が必要です。このような交換が可能であるのは、数列が一様収束する時ですので本当に一様収束するのか確かめてみます。

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となり右辺はwによらない有限値ですから、たしかに一様収束します。これでもってようやく証明が完了しました。

 

「今回の証明のポイント」

 

①示したい式に類似した既知の式から、示したい式との類似点を見つけ出し、それをもとに近づけていく。

 

インテグラルとシグマが入れ替えられるという仮定を勝手にすることで、自由な考えを行う。

→(一般化すると)都合の良い仮定をすることで見通しを良くして自由な発想を得る。

 

③高校生も知っている基本の式変形

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ただし、(|z/w|<1)

を用いる。

といったところでしょうか。自然な発想でいけますね。

 

次に、テイラー展開のもとで次の評価が成り立ちます。

 

《コーシーの評価》

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日本語で言うなら、mはfの円周上における大きさの最大値、となります。まずは行動あるのみですから、aの絶対値をとってみます。

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ここで、実数の積分であれば上式の絶対値をインテグラルの中に分配すると大きくなりました。複素数の場合もそれが成り立つことを、次の補題(lemma)で確認します。

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証明は、

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です。複素数をその大きさと方向に分けたのがpointですね。

これを用いればさらに式変形を進められて、

 

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となり、示せました。

 

次はローラン展開を見ていきます。

 

ローラン展開

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(PROOF)

まずはテイラー展開の証明の時のようにコーシーの積分公式を用いたいのですが、ドーナッツのように真ん中が空いていて、そこでは正則でないかもしれませんから使えません。そこでそのドーナッツの穴を避けるようなルートを考えます。

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それが上図の赤いループです。早速コーシーの積分公式を用いると、

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①、②はテイラー展開の証明の時の要領でシグマ付きの式に直せるでしょう。

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でありますから、テイラー展開の時とは大小関係が少し違っていることに注意すれば、

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となります。これを代入すると、

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となります。最後に、

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のように、限りなくrに近づけても良いので、

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とできて、証明完了です。

 

「証明のポイント」

複素積分で、厄介な点を含む場合は、回避ルートを作って無かったことにする。この時最後に極限をとると都合が良い場合が多い。

 

これをもって2種の展開の紹介ができました。

 

最後に、ローラン展開を用いて特異点を分類することを考えます。

 

特異点の分類》

 

そもそも特異点の定義を言ってませんでしたのでここで紹介します。

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上図のように、ある関数が正則でない点で、しかもその近傍から自身を除いた領域では正則であるようにできる点を特異点と言います。

 

そして特異点には3つの分類があって、

 

  

①除去可能特異点

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  のようにローラン展開が負の冪乗項を含まない。

 

  ②極

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  のように有限個の負の冪乗項で表せる。

 

  ③孤立真性特異点

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  のように有限個の負の冪乗項では表現できない。

 

 

となります。さらに極の場合について捕捉ですが、上式でのα(アルファ)をf(z)の極の位数と言います。

 

これで今回は終わりになります。次回は留数定理と複素積分の際に極を避けるために有用な定理を3つほど紹介します。それが終わりましたらいよいよ実数関数の積分への適用になりこのシリーズも終わりになります。もしよければ今後ともご覧下さい。