竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

複素積分をぱぱっとpart5(留数定理/実数の積分への応用の準備)

いよいよ今回をもちましてこのコラムは完結になります。名残惜しいですが頑張っていきましょう。

《留数定理》

内部に極があるようなループに沿った複素積分は一般に0にはなりません。そこでその値を求めるときに役立つのが留数定理になります。早速見ていきましょう。

まずは留数という言葉の定義です。一般に複素関数は、

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という風にローラン展開できました。そこでk=-1の時の係数を特別に、

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という名前をつけてあげます。そして記号で、

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と表記すると定めます。この子は役に立つから特別名前をつけてあげるのです。どう役立つかは下に述べる留数定理を見るとわかります。

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という設定のもとで

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が成り立つというのが留数定理の主張です。さっそく証明していきましょう。コツはやはり「極を避ける回避ルートを作ること」です。これまでと同じ感じです。

【proof】

まずは下図のオレンジのような回避ルートを作ります。

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ルートについて、

 

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ということが言えますから、

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のようにルートを変えられます。ここに、
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を代入しますと、(上式はローラン展開です)

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となります。そこでl(エル)の値ごとに積分の結果を見てみることにします。

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と計算されますので、つまるところ、

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となります。これを①に用いれば、

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でありますから、結局

 

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となって、留数定理は示されました。

 

《有理型関数》

極を除く全ての点で正則な関数を有理関数と言います。有理関数と聞くと有理数や有理式を思い浮かべる方も多いと思われますが、実は有理関数は、二つの正則な関数を用いて、g(z)/h(z)の形で表せることと同値であることがポアンカレによって示されていますから、有理数(=p\q)や有理式(=(x+1)/(3x+2))と同じようなものだと言えます。

 

この有理関数の複素積分について次の2つの命題(proposition)がありますが、どちらも実数関数の積分への応用の際に欠かせないものですからきちんと証明していきましょう。

 

「property①」

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ここで半円Cとは下のようなコースです。

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これを解くためには次のlemmaを考えると良いです。

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これは複素関数多項式の大きさを評価したものです。右側は、

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ここで、三角不等式を用いています。次に右は、

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こちらも三角不等式を用いています。これでlemmaの証明は終わりです。property①の式については、

 

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であることと、lemmaからわかる

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を用いると、

 

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ここでexp(-Rαsinθ)の積分はすぐにできそうにないので、積分が容易な関数で評価します。

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上図の不等式よりを用いて評価して、さらに計算を進めると、

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となり、示されました。もう片方の命題についても見ていきましょう。property②は実軸上の極を非常に小さな半円のルートで避ける際に役立ちます。

 

「property②」

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が成り立ちます、ここで半円Cは下図の黄色ような小さな半円です。(x。は実軸上の極とします。)また、Q(z)/P(z)はx。に極を持つ有理関数とします。

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まずはz→θへの置換積分です。θの方が具体性が増して考えやすくなりますね。

 

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ここで、「Q(z)/P(z)はx。に極を持つ有理関数」であることから、次の性質が言えます。

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少々大袈裟ですが、これをlemmaとして示していきます。

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と表せます(Q(z)/P(z)はx。に極を持つのでl(エル)は1以上です)一方で、

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ローラン展開できます。二式より

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となり、このことと、

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であることから、

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となり、n=1のみ正しいとわかり、lemmaの証明はできました。

 

この結果を①に用いて計算を進めます。

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となり、代入して、

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一方で、元の被積分関数は、

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ローラン展開できるため、

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となります。①の計算結果とこの上式より、

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の成立を言えます。これで証明完了です。

 

これが最終回と申しておりましたがなんだかんだでペタペタペタペタと式の貼り付けが多くなってしまいましたので、このコラムの最終目標である

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の計算は次回ということにいたします。というわけでこのコラムの終了を心待ちにしてくださっていた方々には申し訳ない気持ちでいっぱいですが、次回を本当の最終回といたします。ぜひ次回もお読みくださいませ。

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