竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

複素積分をぱぱっとpart6完(実数関数の積分への応用/ディリクレ積分)

前回までの記事で、ディリクレ積分

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を求めるための準備は整いましたから、いよいよそれらをフル活用して解いていきます。

 

【目次】

 

複素積分を用いてディリクレ積分を解く

【solution】

まずは前回のproperty①、②を使える形にするために、

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となっていることに注目すると、

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となります。ここで最後にx→zとしたのはxだと実数のイメージがあるためです。なのであまり意味はありません。そしてこれを複素積分していくわけですが、ルートを下のように設定します。

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ルートについて

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となることが言えますから、積分をルートごとに分割して、

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となります。

ε→0

R→∞

の極限では

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であり、property②より

 

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property①より、

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が成り立ちます。最後にResを計算すると、ローラン展開より、

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でありますから、

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とわかり、結局

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になります。最後にこれの虚部をとりますと、

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となり、何と答えはπであることが判明しました。なかなか面白い結果ですね。

 

これまで意外と長い道のりでしたが、きちんと準備を整えるととあっけなく解けてしまいました。このように実数の範囲ではかなり難しい積分が複素積分を活用することであっさり解けてしまうこともよくあるので気が向いたら紹介させていただきます。最後に複素積分を用いずにこの積分(ディリクレ積分)を計算する方法を見てみることにします。

 

複素積分を用いずにディリクレ積分を解く

こちらはかなりテクニカルな手法が取られます。言われればわかりますがなかなか自分で考え出すのは困難かもしれません。

 

まずは

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という関数f(x)を持ってきます。これをxで微分すると、

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ここでIについては大学入試レベルで、

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より、

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となります。すると、

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であることが言えますので、積分すると、

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つまり、

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ということがわかります。あんなにいかつい積分は上式のようにただのtangentの逆関数のマイナスに定数を足したものに等しいというのは意外です。次に境界条件なるものとして、

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を考えると、

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がわかり、最後に

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であることを思い出せば、

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となります。気持ちのいい解法です(勝手に思っているだけですが。)

 

これで一連のコラムは終了になりますがまだまだ複素解析は奥が深いですから、気が向き次第、興味深い内容を記事にできたらと思います。最後までお付き合いくださりありがとうございました。

 

 

《コラムを通して参考にしたもの》

複素関数概説(今吉洋一 著)

複素解析(笠原乾吉 著)