竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

読めばわかる一般相対論part8(測地線方程式の3通りの解釈/測地線方程式からNewton方程式を導く)

前回までの計7回で準備は整いましたのでいよいよ一般相対性理論の本題に入っていきます。次第に「読めばわかる」というタイトルの信憑性が揺らいできたような気がしますが、精一杯頑張りますのでお付き合いください。まず一般相対論は測地線方程式と重力方程式(アインシュタイン方程式)によって表現されるわけですが、今回はその測地線方程式のほうを見ていきたいと思います。そのためにはじめに一般相対論の基本理念を紹介します。

 

基本理念その1:等価原理

 

まずはNewton力学でのお話です。Newton力学によると、物体は力を受けると、

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という法則で加速されます。この時の質量は力を受けた時の物体の加速されにくさ、つまり慣性の大きさを表していますので、慣性質量と名付け添字 I(アイ)をつけておきます。一方で万有引力の法則によると、質量を持った物体間に働く力は、

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となります。ここでの質量は重力の感じ易さを表しますから慣性質量とはまた意味合いが違っています。そこでこちらの質量を重力質量と名づけ、添字Gをつけておきます。そして上の二式より、

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となりますから、加速度について整理すると、

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となります。ところで高校か中学の先生によるとあらゆる物質の重力加速度は一定ということですので、

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という関係式が成り立ちます。これは実際に成り立つことがかなり高い精度で実証されています。このことから、この式においてGを適切に調整すれば、

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とすることができます。そうすると次の図のようなことが起こります。

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つまり、十分小さな、景色の見えないエレベーターに入っている人は、そのエレベーターの紐が切れて自由落下している状態と、重力場のない宇宙空間に放り出されてしまった状態を識別できないということです。この性質を等価原理というのです。

 

この事実はどうでもいいようで実はかなり重要で、重力場中でも重力の存在を無視できる座標系(慣性ローレンツ系と言います)を設定できることを示しています。

 

そしてこのことは次の基本理念その2と組み合わさることで測地線方程式を導くことにつながります。

 

基本理念その2:一般相対性原理

 

名前は少々いかついですがこちらが言っていることは単純で、(重力場中の座標系や加速度運動している座標系も含めた)一般の座標系で、物理法則は不変であるということです。また、(テンソルを紹介したときに見てきたとおり)、座標変換の際にテンソルは一定の変換則によって変換されますから、この原理は結局、物理現象はテンソル形式で書かれるべきであると言い換えることもできます。

 

測地線方程式の導出(基本原理をもとに行う方法)

 

基本理念1(等価原理)より、重力の影響を受けない座標系(x‘)を取ります。他に外力はないとすれば、

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と表せます。次に基本理念2(一般相対性原理)より、上式は一般の座標系(x)に変換できて、

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つまり、

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という式になります。これは測地線方程式といい、一般座標系(x)における重力場中での粒子の自由運動を表す方程式で、変形すると、

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になりますから、接続係数が重力についての情報を含むと考えられます。さらに、接続係数の定義式は

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ですので、接続係数は計量テンソルからのみなっています。ですから、計量テンソルが重力を表していることになります。そして計量テンソルは時空間の特徴(曲がり方)を特徴づけているので、「時空間の曲がり方重力を生む」ということもわかります。

 

測地線方程式の導出②(変分原理を用いる方法)

 

Newton力学での自由粒子の作用は、

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でした。ここで

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と表記できます。これを重力場中の自由粒子の場合に当てはめるには、

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のように書き換えます。すると、

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となりまして、作用とラグランジュ方程式

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になります。ここでラグランジアンLは不変量になっています。

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のようになりますので、ラグランジュ方程式

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となり、最後の式は測地線方程式となりました。

 

測地線方程式の導出③(平行移動の考え方を用いる方法)

 

測地線方程式は重力場中での自由粒子の運動ですから、曲がった空間を粒子が(粒子の立場から見た時に)まっすぐ進むことを表す式であると考えられます。

これはりんごの上を這うアリによって例えられます(フォスター・ナイチンゲール著/『一般相対論入門』に紹介されています。それによると3人の物理学者が発案したようです。)

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リンゴの表面上の世界において、リンゴ上のアリが真っ直ぐに進むには足を常に平行にしてすべての足が同じ歩幅になるように歩けば良いのです。しかしアリはどんどんと茎に吸い寄せられていきます。表面上の世界では茎がアリを引き寄せているように感じますが、それをリンゴを見つめている高次の人間が見てみると、アリはまっすぐ歩いていないし、茎によって曲げられた表面に沿ってアリがたんたんと歩いているだけに見えます。これは相対論にも言えることで、人間は重力を感じているわけですが、それを高次の世界で見れば、ただ物質によって曲げられた時空間を人間が進んでいるだけに見えるのです。(YouTube に曲線上の測地線上を動く矢印がひたすら流れている映像があったので見てみるのもいいかもしれません)

 

 

そこで重力場中の自由粒子の方程式は、曲がった空間でなるべく真っ直ぐに進んだ時の軌跡であるとして考えていきます。

 

まずその軌跡は

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とパラメータ表示できたとして、なるべく真っ直ぐに進むとはこの軌跡の接線がこの軌跡に沿って平行であるということに他ならないので、(これを厳密に証明するのは難しいかもしれませんが、2次元のケースで考えると正しいだろうということはなんとなくわかります。)平行の考え方より、

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となり、今回も無事測地線方程式が出てきました。これで3通りの導出方法は紹介し終えましたがまだ方法はありますから気になる方は本やネットで調べるのもいいですね。それでは最後に測地線方程式がNewton方程式を特別なケースとして含んでいることを確認して終わります。まずは測地線方程式の左辺のうち、空間成分のみを取り出します。(ギリシア文字は空間成分を表しています)

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cは高速で、粒子の速度はこれよりもずっと遅いことを仮定すると、

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となり、さらに、

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という仮定(重力は時間変化せず、十分弱いということです)をすると、

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ですので、

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となります。これを代入すると、

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と近似されて、さらに、

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と置き換えると、

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となります。これはNewton方程式でφは重力ポテンシャルを表していることがわかります。このことで、測地線方程式はNewton方程式を含んだより普遍的な法則であることと、実際に重力ポテンシャルφが接続係数に由来していることを確かめられました。

 

 

以上で測地線方程式については終わりです。少々説明がくどかったりわかりづらかったりしたかもしれません(すみません)。個人的に一般相対論は一つの本で理解するのは困難であると思っていますからネットでレビューの高い入門書を買ってみるのもいいと思います。次回は重力方程式を出来るだけ導出も込みで紹介いたします。よろしければ引き続きご覧ください。

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