竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

読めばわかる一般相対論pqrt9(アインシュタイン方程式の導入)

回はアインシュタイン方程式(重力方程式)を導出していきます。とはいえ初めから着々と理論を積み重ねて導出するのは(自分には到底)困難ですから、結果を知っているからこその天下り式の考え方をいくつも採用しながらどうにか導出をしてくことになりますのでお見苦しいかもしれませんがどうぞお付き合さい。導出の方針ですが、今回はNewton力学での重力場の方程式からの類推によって導いていきます。

 

ず、Newtonの重力場の方程式は

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になります。左辺は2回微分になっており、右辺は質量分布についての式になっています。これを一般相対論の場合に拡張していくわけですが、まずは右辺について考えます。

 

【右辺について】

特殊相対論によると質量はエネルギーです(E=mc²)。そうすると右辺はエネルギーについての式になりますが、前回紹介した基本理念②の一般相対性原理によると、物理法則はテンソルで書かれるべきなのでしたから、テンソルを右辺に持ってきたいところです。そこで流体力学に出てくる「エネルギー・運動量テンソル」というエネルギーと運動量を表すテンソルを、4元化したテンソルを採用することにします。(このことについての詳細は流体力学についての記事をやる際に見ていく予定です。)

 

【左辺について】

前回考えた測地線方程式でも見た通り、重力とは時空間の曲がりによって現れる見かけの力でした。そこで左辺の重力ポテンシャルΦは時空間を特徴づけるなんらかの量であると考えられます。

 

上の簡単な議論から次のような方向性で書き換えられそうであることがわかります。

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【Fについて具体的に】

次にFを決めていきます。Fには満たしてもらわないと困る条件がいくつかありますので順にみていきましょう。

 

《条件その1;Fは上添え字が2個、下添え字が0個のテンソル

これは右辺のテンソルの形からわかります。

 

《条件その2;二階の微分作用素である》

これはNewtonの重力場の方程式からの類推です。

 

《条件その3;空間の曲がり具合を表すものから成る》

重力とは空間の曲がり加減によるものですからそう言うことができそうです。

 

《条件その4;下の①式を満たす》

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流体力学においてエネルギー、運動量が保存するとき

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を満たすということが知られています。これを一般相対論でいうには偏微分を共変微分に換えて、

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とすればよいでしょう。ですから左辺も共変微分すると0になり、①式が成り立つべきであるといえます。

 

《条件その5;下の②式が成り立つ》

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真空のケースでは重力の元である物質が存在しないので右辺が0となり、時空間はミンコフスキー空間になると考えるのが自然ですから、計量テンソルはミンコフスキー計量となるでしょう。

 

上の5個の条件を満たすFのうち、なるべくシンプルなものを探していきます。まずは準備の段階で考えたリーマン曲率テンソルを下図のように変形して、リッチテンソルとリッチスカラーを作ります。

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そしてリーマン曲率テンソルの定義式から、リッチテンソルは条件1~3を満たしているとわかります。そこで、

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というようなリッチテンソルと計量テンソルから成るまだ未定の項の足し算であると仮定します。これが条件その④を満たすように未定の項を決めていきます。そのためにはビアンキ恒等式を以下のように変形して考えます。

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さらに①、②を計算すると、

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であり、

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となるので結局、

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となります。ここで

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という添え字についての対称性を用いました。(これはこのサイトでは証明していませんが、リーマン曲率テンソルの定義式にさらに接続係数の定義式を代入し、計量テンソルのみからなる式にすれば示せると思います。)

 

そうすると、

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は条件その1~4を満たしており、ミンコフスキー空間では曲率は0ですから、条件その5も満たされます。さらにこれの定数倍も条件を満たします。

 

以上から、

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(追記;普通上式の添字は下に二つ書かれるようです。うっかりしていて上添え字(i、j)にしてしまいましたが、これは適切に計量テンソルを二つ掛け合わせれば直せます。すみませんでした。)

 という式が最もらしいことがわかりました。この式がアインシュタイン方程式と言われるもので、物質分布と時空間の曲がり方とを結び付けてくれます。

 

の方程式が正しいという証明は何一つ提示していないわけですから読者の方は腑に落ちないかもしれませんが、これがアインシュタインによって発表されてから今日に至るまで観測結果に矛盾しないことがわかっていますので安心してこの式の正当性を受け入れてよいと思われます。今回の方法よりも随分難しくなりますが、変分法を用いるアプローチはよりエレガントで納得しやすいですからいずれ紹介できたらと思います。

 

 

くなりましたが、一応これで一般相対論の基本理論はこれで終わりで、次回はここからさらに係数を決めていきたいと思います。もしよろしければ次回以降もご覧ください。

hannak.hatenablog.com