読めばわかる一般相対論part10(アインシュタイン方程式の係数を決める)
前回はアインシュタイン方程式を導出しましたが、まだ定数を決められてませんでした。そこで今回は、アインシュタイン方程式の非相対論的極限をとり、ポアソン方程式と比較することでその係数を求めていきます。
前回はうっかりしていて添字を上側につけた式をアインシュタイン方程式として導出してしまいましたが、ふつうは下側に添字をつけたものをアインシュタイン方程式としていますので、今回からはそちらを採用していくことにします。(ただ前回の式に計量テンソルをかけて添字を下げれば良いだけの話です。)
すると今回の目標は、
において、κ(カッパ)を求めることです。
そのためには、先にも述べたとおり、非相対論的極限を考えたとき上式が、
というNewton力学において成り立っているポアソン方程式に帰着するようにすれば良いでしょう。非相対論的状況でNewton力学と矛盾していては話になりませんからね。
まずは非相対論的極限を数式にすると、したになります。
これはつまり、物質の動きがゆっくりで、時空間は平ら(つまりミンコフスキー時空)に非常に近いということです。その時のアインシュタイン方程式を書き下すわけですが、そのままですと、リッチテンソルとリッチスカラーの両方を求めなくてはなりませんので面倒です。そこで以下のような変形を施していきます。
この変形では、
となることが用いられています。そうすると、アインシュタイン方程式は、
となり、見事リッチスカラーを見えなくすることに成功しました。
これからはこの式の非相対論的極限を考えていくことにします。まずは右辺のエネルギー運動量テンソルは、もとの定義に、非相対論的極限において成り立つ関係式を用いることで、
と近似されます。
そうすると、変形したアインシュタイン方程式のうちi=0、j=0の成分のみ考えれば良いことがわかります。この成分について書き出すと、
となっています。さらに、T(添字なし)については、
となっています。ここでエネルギー運動量テンソルの定義を用いて、(これは流体力学を扱うときに解説する予定です。)
以上から、変形したアインシュタイン方程式の右辺は、
となります。次は左辺ですが、リーマン曲率テンソルは接続係数から構成されていて、した式のように近似されます。
ですからリッチテンソルは、
となります。(追記;第二段目の=は≒の誤りでした。これは一個上のリーマン曲率テンソルの近似式より分かります。した式の=も同様に≒の誤りです。)すると、(0,0)成分は、
です。そこでまず第二項を計算すると、
となります。次に第一項は、
となります。ゆえに、
と分かります。ここで、前々回に測地線方程式をNewton方程式に帰着させたときに、
となることがわかりましたから、これを用いれば変形したアインシュタイン方程式は、
となり、これがポアソン方程式に等しくなればよいのでしたから、
κについて解くと、
となり、ようやく解決しました。改めてアインシュタイン方程式をκの値を入れて書くと、
です。
大胆に近似していくとかなり計算は楽になりますが自分は計算力がないので大変でした。これでアインシュタイン方程式は完全に決まりましたから、次回以降はこれと、前々回の測地線方程式を元に、ブラックホールや観測される現象との整合性(光の湾曲、水星の近日点移動、光の赤方偏位など)を見ていき、このコラムは終了といたします。
とはいえ相対論はまだまだ奥が深いですから、また別の題を立てて新たなコラムを始めていこうと思っております。そこでは本コラムでは扱えなかった詳細や、重力波について、さらにはゲージ理論を見ていこうと思います。それでは。