竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

読めばわかる一般相対論part11(シュワルツシルト解の導出)

前回はアインシュタイン方程式を導出しました。せっかくですので今回はこの方程式を解いていきたいわけですが、実はこの方程式はほどんどのケースで手計算はおろかコンピュータでも解くことが困難なようです。といいつつも、質量分布が完全に球対称で静的であるケースではかなり楽に解くことができます。この時の解をシュワルツシルト解といい、ブラックホールの良い近似として知られています。(シュワルツシルトさんは戦争で出兵しているときにこの解を求めたらしいです。すごいなぁ)

 

早速解いていきましょう。

まず考えている状況は完全に球対称でありますから球座標で考えると良さそうです。

つまり、

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この時全微分は、

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となります。するとミンコフスキー空間を考えた時の線素は、上式をただ代入して

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と表されます。つまり球座標でのミンコフスキー計量は行列で

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のようにかけるのです。

等価原理によると局所ローレンツ系があらゆる点で定められたのですから、上式を用いて局所ローレンツ系(x‘)での計量テンソルηを一般座標系での計量テンソルgに変換すると、

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となります。さらに計算を進めていくわけですが、角度についての変数は、他の変数の変換に関わらないし、自身の変換では変化しないと考えられるので、

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となります。そのことからいくつかのgijが0となり、それを表にすると下です。

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(※は今の段階では0とは限らないある数であることを表しています。)

すると、

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となります。次に時間を反転(つまり逆再生)することを考えます。すると

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となるわけですが、今扱っている状況は完全に静的ですから、逆再生しても計量テンソルが変わるはずがありません。ですから、

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となり、結局は

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という形で書くことができることになります。この式から測地線方程式を導きます。(測地線方程式を導出する回で紹介しました変分法を使った方法を用います。よろしければご覧ください。)

そこから接続係数を読み取っていき、さらにそれを使ってリッチテンソル、リッチスカラーアインシュタインテンソルを求めていくわけですが、ここで一つ計算を楽にするために下のようなeを用いた係数を用います。今回は静的で球対称なので係数はrのみの関数になります。

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するとラグランジアンはこれをdτ2で割ったもので、

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となります。この式から、それぞれの変数(t、r、θ、φ)についてのラグランジュ方程式を導きます。

 

(イ);tについては、

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となります。最後は測地線方程式の定義式と比較して導きました。

他も同様で、

 

(ロ);rについて

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(ハ);θについて

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(ニ);φについて

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以上から接続係数が全て求まりました。(上に書かれていない接続係数の成分は0になるため省略させていただきました。)

 

先に述べたように、これを用いてリッチテンソルを求めます。まず定義式を思い出すと、

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となりますから、Rの00、11、22の成分を求めると、

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となります。この3成分しか求めなかった理由は、実はこの3成分の情報だけで解が求まるということが知られているからです。(天下ってしまってすみません)

 

ここで前回アインシュタイン方程式の係数を求めるときに用いたアインシュタイン方程式の変形ver.は

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でしたから、もしも質量が分布していない(つまり真空)領域のみを議論の対象とするなら、エネルギー運動量テンソルは0となりますので

 

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が言えますこのことを上で求めたリッチテンソルの3成分に用いると、

 

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という連立方程式が出てきました。まずは①と②の対称性に注目して、①+②をすると、

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です。これを用いて③式の変数をβのみにすると、下のように微分方程式がててきますので変数分離法で解くと、

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となります。以上から2つの積分定数c1、c2を用いて、

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になります。最後にこの積分定数を求めれば完全に解けますので頑張っていきます。

そのためにはやはり今回もNewton力学に帰着できることを条件とします。まずは無限遠ではミンコフスキー空間になるはずですから、

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が条件で、

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となります。よって、

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となります。次に無限遠までとは言わないまでも、十分遠くにおいてはただの万有引力に帰着しますから、

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となります。ここで測地線方程式をNewton方程式に帰着させたときにわかったh00についての式を用いました。

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がわかります。これでようやく解が求まりました。実際に解を書いてみると、

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になります。これがシュワルツシルト解なのです。


始めにこの解は簡単に求まると言っていましたが、いざ計算してみるとなかなか骨が折れます。せっかく苦労して解いたのですから、次回はこれの物理的意味を考え、ブラックホールについても見ていきます。なかなか回りくどい解説でしたでしょうがここまで見てくださり誠に有難うございます。(どうでも良いですが、大概のサイトは大概の人に前半50%だけ読まれて終わるらしいです。これを知って私は最後まで読んでくださった方への感謝の気持ちが一層強くなりました。)もしよろしければ次回もご覧ください。

hannak.hatenablog.com