竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

読めばわかる一般相対論part12(シュワルツシルト解の解釈/重力赤方偏移/光の湾曲)

回は頑張ってシュワルツシルト解を求めましたが、その意味については触れられませんでした。ですので今回はまず初めにその解釈を簡単に行い、ブラックホールが理論上存在することを見ていきます。そのあとは、シュワルツシルト解を用いた一般相対論の検証として有名な重力赤方偏移と光の湾曲について各々見ていきます。

 《目次》

 

シュワルツシルト解が教えてくれること

一応シュワルツシルト解を再掲しておきます。

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ここで考えたいのは下図のように動径軸上のr₁からr₂へ光を出すという状況です。その時に光が移動するのにかかる時間を求めてみます。

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まずこの状況は動径方向のみで考えられますから、θ=0となるように座標をとれます。そうするとシュワルツシルト解は、

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となります。さらに光はnull的ですので、「線素」=0が成り立ち、

(一般相対性原理より各点でミンコフスキー座標を取ることが可能です。その座標では特殊相対論が成り立ち、特殊相対論によると光の線素は0でした。ですからそれを一般座標に座標変換しても0のままになります。ので上のようなことが言えます)

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と変形できます。あとは両辺を積分して仕舞えばよくて、

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と計算されます。ここではr₁、r₂は2GM/c²より大きいとしました。この計算の結果、次のような面白いことがわかります。

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ここで、

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と定め、これをシュワルツシルト半径と名付けます。以上により、rsより外側から入ってきた光は永遠にrsに辿り着かないことがわかりました。ですから外部からrsより小さい領域の景色を見ることは絶対にできないので真っ暗になります。そのような領域をブラックホールと呼ぶわけです。(実際には光の湾曲により、真っ暗な領域はもっと大きくなります。)

最後に注意しなくてはならないのは、ここで考えているシュワルツシルト解は真空中にのみ適用されますから(これは導出過程の仮定からわかります)物質がシュワルツシルト半径より小さな領域に収まっていなくてはならないことです。ですから、地球や太陽のように密度の低い星はブラックホールではなく、ずっと小さく重い星のみブラックホールとなれるのです。

重力赤方偏移

下図のように地点Aから地点Bに光が放たれる状況を考えます。このときそれぞれの点における光の色(つまり振動数)がどうなっているのかを見ていきましょう。

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まず光は座標時間(じゅうぶん遠方での観測者の時間)でΔtの間出されたとします。

地点A、Bの十分近傍では座標はミンコフスキー時空とみなせます。また、座標時間をtとして点Aでのシュワルツシルト計量をgij(A)、Bではgij(B)とおきます。そうすると、点A,Bでの局所ローレンツ系での線素と座標系での線素は等しいことから、

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となります。固有時間について解くと、

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です。どの系で見ても振動回数は同じですから、振動数をνとして、

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がわかります。あとは具体的にシュワルツシルト計量を代入して、

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となりますので、

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という関係が分かります。つまり点Bで観測される光は点Aよりも振動数が小さい(つまり赤っぽくなっている)のです。このことは観測事実に合致します。(実際には重力以外にドップラー効果も考えなくてはなりません。)

光の湾曲

光が重力源の近くを通った時の軌道を考えます

確か測地線方程式を導くためのラグランジアンは、

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でした。今回、光はひとつの面上でのみ運動をしますから、その面がθ=π/2なる面となるように座標を設定して、

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と簡略化します。そこでt、φについてのラグランジュ方程式を考えると、

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という一定値と

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という一定値があることがわかります。また、今回も光がnull的ですので線素は0となり

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が成り立ちます。この式に①、②を代入して整理していきます。初めに準備として、

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が分かります。これと①、②より、整理すると、

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これをdφ/drについて解きます。

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最後の式でもってΦを定義します。(どうしてこうするのかは自分には分かりませんがこうするとうまくいくのです。面倒な2項の掛け算を分割して考えようといった気持ちがあったのでしょうか)

そしてdΦ/dθの方をまず考えると、

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積分して、

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ですから積分定数をφ0として、

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これをcosで括ると、

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いま角度Φの原点には言及していませんから、

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となるように原点を定めることができます。また、

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となるΦ₁も定めます。すると、

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のように近似され、その調子でsineについても、

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と近似されます。この結果をもとにφを考えます。φとΦの関係は

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で結ばれていました。これを積分し、上で求めた近似式を用いると、

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となり、無事光が入ってくる方角とφ=0の方角がなす角度を求められました。図にすると下です。

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ですから結局光がいくら曲げられたのかというと、上図で中学生の幾何学を使い、

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であることがわかります。思えばα、rsは勝手に決めた記号でしたので、きちんと書くと下になります。

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ここでRは上の光の軌跡の図で申し訳程度にオレンジで書かれています。

実はこの結果はNewton力学において光の粒子の重さを仮定し、無理矢理求めた時の結果のちょうど2倍になります。昔、エディントンさんによって日食の際に太陽による光の曲がり具合を調べたことがあったのですがその観測データはNewton力学よりも一般相対論の結果に近かったため一般相対論の検証として一役を買ったそうです。

 

上で今回のトピックは全て紹介できました。次回は水星の近日点移動を考えていきます。もしよろしければ次回もご覧ください。

 

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【前回の記事】

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