竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

わかりやすい解析力学part1(最小作用の原理/ラグランジュ形式/ハミルトン形式/ネーターの定理)

一般相対論を勉強する際に水星の近日点移動というものがあるのですが、それを考えるには解析力学の範囲であるラグランジュの惑星方程式というものが必要であるとわかりました。高校時代に解析力学ランダウ先生の本で勉強したのですが正直あまり身についていませんのでこれを機に解析力学をもう一度学びなおそうと思い立ちました。そこで、飽き性の私には一人で勉強していても長く続かないはずですのでこのブログに書き留めていくわけですが、ブログのタイトルにある通りわかりやすい解説をめざしてまいります。どうぞお付き合いください。

 

【目次】

 

 

最小作用の原理

最小作用の原理とは物理学において非常に重要な原理でして「物理系の対称性や不変量などから決まるラグランジアンと呼ばれる量Lを始点から終点までのある経路に沿って積分した量Sは、その経路が実際に現象として起こりうるものである場合に最小値となる」といった主張をするものです。この原理を今回はNewton力学に用いて考えていくわけですが他にも相対論や電磁気学量子論など幅広い分野で用いられているのが見られます。わたくしのブログでは今のところ以下の用例(随時更新中)を紹介しておりますのでよろしければ参考にしてください。

 

最小作用の原理をNewton力学に適用する

粒子の運動というのは各時刻における位置と速度によって定まります。ですから位置と速度を基底とする平面上の曲線を時刻tでパラメータ表示したものはその粒子の運動そのものを表すこととなります。

ところで最小作用の原理によるとラグランジアンと呼ばれる量Lをこの経路に沿って積分した値を作用Sといい、これが最小値であるものが実際の運動なのでした。つまり今考えている状況は下図であり、

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作用Sは

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になります。そして実際に起こりうる経路においては、Sが最小値となります。実際の経路から微小に変位した経路(具体的にはx→x+δx / x’→x’+δx’とします。)における作用をS+δSとして、

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となりますから、δSを詳しく計算していくと

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がわかります。ここでδxは任意の微小変位ですから、結局Sが最小のとき、

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の成立がわかります。これをラグランジュ方程式といいます。

ラグランジアンというのは系を表現した量ですが

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とういようにLに任意の関数の時間全微分を足し合わせた新たなラグランジアンをL’とするとき、LとL’は同じ系を表していることが知られています。つまりある系を表しているラグランジアンというのは任意の関数の全微分を足すという任意性を持っています。これを確かめるには「Lの作用Sが最小であること」と「L’の作用S’が最小であること」が同値であることを見ればよく、

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ですので、

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となり示せました。

 

 最小作用の原理によるとラグランジュ方程式が現象を表現しているわけですがLの値が決まらない限りはよくわかりません。ですのでつぎにラグランジアンがどういった形で表されるのかを見ていきます。そのためにはNewtonの運動方程式ラグランジュ方程式に等しいことからさかのぼってラグランジアンを決める方法もありますが、一般に物理現象を(ラグランジアンを用いて)考えるときは初めに空間の対称性や不変性からラグランジアンを予想し、それからラグランジュ方程式を立てて初めて方程式が得られるといった順番で議論が進みますから、今回もそれに倣います。すなわちまず始めにラグランジアンを決めてそこから運動方程式を導いていきます。

 まずは自由粒子ひとつのラグランジアンを決めます。

 慣性系間での座標変換に際して物理現象は不変ですから、

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という微小な一定速度で相対運動している2つの座標間で変換したとき、ラグランジアンはある関数の時間全微分だけしか変わらないはずです。(逆にそれ以上に変わってしまったら別の運動に見えてしまいガリレイ変換の主張に反します。)ですから

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において①は、

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という形に収まるはずであり、

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ですから(∵V=const.)結局、

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がわかります。ここで定数をm/2と置いたのはNewtonの方程式との一致を図るためです。そうすればL=mx’²/2となります。(ここで「’」は時間微分を表す)

つぎに位置のみに依存する外力があった場合にはラグランジアンにはxだけの関数として、U(x)をつけて、

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と表せます。これを粒子がk個ある孤立系に拡張すると、

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となります。これはU(x)が各々の位置に由来しており、自由粒子ラグランジアンであるmx’²/2のシグマをとっている項は、「互いに相互作用しない二つの系におけるラグランジアンを足し合わせたものは二つの系をひとまとめにした系のラグランジアンに等しい」というラグランジアンの加法性からわかります。

 

以上で力学におけるラグランジアンラグランジュ方程式が求まりました。

次に運動の積分について考えていきます。

 

ネーターの定理

ある現象を考える時に時間が変化しても変わらない量があります。高校では例えばエネルギーや運動量、角運動量がそうであると習いましたね。このような不変量を運動の積分と言ったりします。そのような不変性が成り立つ理由を系の対称性や一様性に帰着させて考えようというのがネーターの定理です。

まず、座標によらずに概念的に位置を表す一般化座標qをとります。これが

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という変化をするように座標変換したとしても、空間の対象性や一様性によりラグランジアンは変わりません。ですので変換前と変換後のラグランジアンの差は

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であり、これが0なので、

 

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が成り立つのです。つまり、

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という不変量が導かれます。さらに具体性を高めて、

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というパラメータuを使った座標変換であるとします。すると

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がわかります。複数の自由度がある場合も同様にして、

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という不変量と結びつきます。これをネーターの定理と言います。これの演繹としてエネルギーや運動量などの不変量が導かれるわけです。以降はそれを確認していきます。

 

空間の一様性から運動量保存則を導く

空間が一様であることから、直交座標系において

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という座標変換をしてもラグランジアンは不変です。ですからこの変換においてネーターの定理を適用すると、

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となります。ここで運動量を、

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で定めると、

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となりますから、運動量保存則が確認されました。

 

空間の等方性から角運動量保存則を導く

空間は等方ですので、

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という回転の座標変換をしてもラグランジアンは不変です。これをネーターの定理に適用すると、

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となり、角運動量保存則が確認されます。

時間の一様性からエネルギー保存則を導く

これまでは空間についての対称性を考えてきたためネーターの定理を素直に適用することができましたが今回は時間の対称性なので少し工夫が必要です。

まずは作用を

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のようにパラメータuを用いて表しますそうすると新たなラグランジアン

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を考えることが可能です。そこで

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のように変数を置き換えてネーターの定理を適用します。

 もしも外からの作用が時間変化しなければ、時間の一様性より、

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のような変換をしてもラグランジアンは変わりませんので、ネーターの定理より

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 となります。ここで出てきた不変量を

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というふうにHと定め、これをハミルトニアンと定義しましす。

 

ハミルトニアン正準方程式

前節で出てきたハミルトニアンというのはラグランジアンルジャンドル変換であることがわかりますので、両者は同値関係にあります。ですからハミルトニアンを使ってラグランジュ方程式的な運動を記述する式が導けるはずで、

ルジャンドル変換についての簡単な説明は以下の記事でしておりますので併せてご利用ください

ルジャンドル変換の解説記事

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の全微分は、

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ですから結局これは

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のように(p,q,t)の関数であります。そうすると

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と書くこともできますから、微小項ごとの係数を比べて

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がわかります。これがいま求めたかった方程式で正準方程式といいます。

正準方程式というのは運動を表現するものですから最小作用の原理からも導けます。実際、

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ですのでやはり、

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が成り立つとわかります。

 

かなり長くなってしまいましたが今回はこれで以上です。次回はポアソンカッコと正準変換、リユビユの定理などを見ていきます。ぜひともご覧ください。

【次回】

hannak.hatenablog.com

 

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