竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

コーヒー自家焙煎のススメとその方法について

コーヒー焙煎を初めたのは去年の5月だったから、もう1年が経った。その頃はちょうどCovid一19に関する緊急事態宣言が出されて学校が休みだったから暇を持て余していたのだろうか。なぜか随分と昔のように思われてあまり覚えていない。

準備としてはまずAmazonで持ち手のついた焙煎網を2000円弱で買って、それからすぐに生豆をworld  beans  shop というオンラインショップでいくつか買っただけだった。全部で5000円もあればすぐに始められる趣味なので割といいかもしれない。ぜひ少しでも興味が湧いたら始めてみていだだきたい。私としては全国に自宅コーヒー焙煎家が増えることほど嬉しいことはないのだ。というのも実を言うと焙煎は意外にも大変で、楽しいには楽しいのだかもう少し楽にやってしまいたい、そう例えば全自動焙煎機なんてものが家庭用にあれば最高だ。それもトースターやカセットコンロくらいの値段で。そこでもし焙煎が日常になれば白物家電大手の日立や三菱、パナソニック(パナソニック製の焙煎機は売られているのだが私には高すぎる)あるいはアイリスオオヤマでも良いのだが、そのような企業が電気屋で焙煎を普通に販売してくれればどんなに良いことかと、コンロの前でコーヒーが色づくのを見ながらいつも思うのである。なんだか実現性の低い話になってしまったがつまり言いたいことは意外とコーヒー焙煎の敷居は低いということだ。それにコーヒー焙煎はただの趣味でしかないわけではなく経済的でもある。普通、どこかの店で農家の顔写真付きのコーヒー豆を焙煎した状態で買うとなればグラム500円では安いくらいでデパートであれば1000円が妥当だろう。しかし適当にオンラインの生豆ショップを覗いてもらえればわかる通り、生豆であでばそんなものは大体200円か300円で売っている。もしクオリティーにこだわらなければ、例えばブラジルのno2というグレードのもので話をすると、(上から二番目のグレードで、カフェで目にするブラジルコーヒーは大抵これだから別に際立って品質が悪いと言うわけではない)グラム100円もしくはそれを切る程度の値段で入手可能で、これは下手するとアメリカ産の豚肉より安い。もちろん生豆は水分を含むから実際の正味量ではもう少し値段が上がる計算になるだろうけれどそんなものは誤差の範囲である。

そしてなんといってもうまいのだ。たとえグラム100円のブラジルコーヒーを買ったとしても適切に豆の選別(ピッキング)を行い適切に焙煎し適切に保管して適切に抽出して飲めばスタバなんて比ではない。(もちろん稀にどういうわけか非常に美味しいコーヒーを提供してくれるスタバもある。個人的に思うにそう言った店舗はオフィス街などにあるためテイクアウトが多く、豆の循環が良いためであると勝手に結論している。その理論によればオフィス街のコーヒーショップあるいはコンビニのコーヒーはだいたい美味しいことになるが、経験上これは正しいように思われる。実際に塾生のときのことだが、周りにはいくつもコンビニがあるのだが少し歩いてオフィス街にあるローソンの100円コーヒーは、ショッピングモールなんかに入っているスタバやドトールをゆうに超えたおいしさを提供してくれていた。話が長くなったが本題に戻ろう)つまり焙煎というのは手間を苦にしなければ最高の手段である。

そういうわけで私は焙煎をしているわけで、ついさっきも実際にやっていた。私と同じく焙煎をしている方は当然もうご存知であろうけれど、まだ未経験である方はあまり具体的に想像することが容易ではない可能性もあるわけだから、私の拙い文と写真でプロセスをざっと紹介していく。

 

ピッキングについて

①まずは選別だ。これはヤンキー学校の選抜クラスから不良の毛がある生徒を普通クラスに追いやる気持ちでやるとうまくいく。つまり少しでも良い生徒(良い豆)に悪影響のありそうな不良(悪い豆。欠点豆と呼ぶ)を躊躇なくつまみ出すのだ。欠点豆というのはいわば腐ったみかんで、そいつがいるだけでコーヒー全体が不味くなる。だから決して混ざってはならないのだ。法律家には怒られてしまうが、疑わしきは罰するの精神が大切である。

といっても欠点豆の判断基準が分からないと良くないので以下写真と共に挙げていく。悪い順に上げていくのでそれも参考にしていただきたい。また写真が出せていない類のものは幸い私のお気に入りのworld  beans shopがある程度ピッキングを済ませてくれているから、私はまだ見たことがない。とはいえいつかは出会ってしまうもだからそうなり次第ここに例として貼っておく。)

 

①異物

ネットによると石やネジさらにはどういうわけかコーンまで混入することがあるそうだ。コーンなんかが入っていてはコーンスープになってしまうからこれらは最優先に取り除きたい。

 

②カビ

大抵の場合虫食い穴の中にカビが繁殖している。穴の中に青カビが生えているのだがぼうっとしていると思わず見逃してしまうので最新の注意が必要である。私は大した変態産ではないのでこれを集めてわざわざコーヒーを入れたことがないのでわからないが、噂によると吐きそうなカビ臭さの原因らしい。一体どうしてそのようなことを知っているのだろう。まさかわざわざカビの生えた生豆でコーヒーを入れてみたのだろうか。

(残念ながら写真としてみやすい例は今は持っていないが、すぐにでも掲載しようと思う)

 

③未成熟豆/死豆

これらは違う分類だが、素人の私には違いが認識できないし、かりにどちらか一方だけを分類して保管しておきたいという変わった嗜好がなければ困まらないので同時に判断する。特徴は色が白っぽいもので、周りと比べて色が白すぎればただちに取り除くとよい。

 

④発酵豆/黒豆

こちらも同じような理由でまとめて判断する。まあ流石にこれらの違いはわかるが、分けて判断する理由もないためだ。特徴は黒っぽいことだ。周りと比べて黒っぽければ取り除く。但し稀にチャフという薄皮がついているため黒っぽく見えるものもあるから、判断しかねたら爪で削ってみると良い。気持ち悪い見た目なので③よりもこちらを取り除きたくなるかもしれないが③、④にこれといった優先度の違いはない。

 

⑤形が異常な豆

これは別に取り除かなくてもいいが、焼きムラになるためできれば取り除いた方が良い。また形が異常なものの中には未成熟豆も含まれるためやはり取り除くべきだ。

 

これらが欠点豆の特徴だがいちいちこれは③に該当するから排除、これは④に該当するから排除、、、、と考えてやっているわけではない。コツとしてはまず豆を重ならないように広げ、ざっとみることでその産地や農家におけるいわゆる「標準的な豆」がなんなのかを理解する。そしてその標準を含むバンドから逸脱したものは排除する。それだけだ。これはつまり人間社会の縮図で、なんとなく直感的に標準を見つけ、そこから著しく外れたものは疎まれるのだ。きっとこれは人間の本能であろうからいくら努力してもピッキングが苦手だなんて人は尊敬し祭あげるに値するほどの人格者だけだろう。

 

焙煎について

というわけでピッキングはこれでマスターしたことになる。次は焙煎だ。これも①、②、③と順に見ていく。まず工程を通して言えるコツは、ずっと火力を最大にすることだ。コーヒーに焼きむらができるとまずいので安定した広範囲にわたる火力が必要だからだ。それでは焦げてしまうという方がいらっしゃるかもしれないが、これは火口からの距離を自分で変えることで解決できよう。あとはずっと揺すっていることも大切だ。むらを決して作ってはいけないし一方向に熱が入りすぎるのは焦げの原因になる。コーヒーは焦げた色をしているが決してそれは焦げではないのだ。本当に焦がしてしまうと炭を削って水に溶いたようなコーヒーが出来上がるのでこれだけは避けなくてはならない。最後にこれはただのお節介だが燃えやすいものが側にあるのはよろしくない。燃えたチャフ(薄皮)がよく宙を舞うのだ。とはいえそのほとんどは着地する前に消えるから心配はいらない。念のためということだ。

 

①乾燥

まずは生豆の水分を飛ばしてしまう。一般に感想の段階はゆっくりと火を通すべきであると言われているが、個人的には別に初めは高温でもいいと思っている。水分を含んだ豆はゆっくりと温度上昇が起こる筈だから、色が変わるまでは火口のそばで炎の先端から10センチくらいの位置に置いておけばよい。

そこから少しずつ黄緑色に色づいてくるが、そうなってくると水分が減ってきているので少し火口から離す。そこから少したてば黄色になってくる。これで乾燥の行程は完了だが、ダメ押しで火口から20センチくらいの位置でもう少し熱して水分を飛ばしても良い。このくらいからいい匂いがしてくる。

 

②焼き

ここからは焼きの工程だ。コーヒーをカブトムシのように黒光りする色に変えていく。(まあ焙煎度は好みと用途によるため一概にはいえないが、私はいつもエスプレッソを飲むから深入りまで焼いていく。深入りはだいたいカブトムシやご○ぶりの背の色を手本とすれば良い。)

まずは炎の先端から10センチくらいの位置で焼いていき、「パッチ」という音がするまで我慢する。音がしたら若干火から遠ざけいっそうよく揺さぶってやる。これが一旦終わったらドリップコーヒーの人はここで取り出してもいいし、深入りがいい人は再び火に近づけて2回目の「パッチ」という音を待つ。

この時の音はさっきのよりもだいぶ小さく細かな音なので聞き分けるのは容易い。ここでもっとも注意が必要なのは焦げである。水分がだいぶ抜けているから油断して揺するのをやめたり焦って火に近づけすぎると炭になってしまう。

2回目の「パッチ」が聞こえたらその瞬間火の先端からだいぶ離す。(手を当てて1秒くらいなら我慢できるくらいの温度帯)そうしても音が止むことはないし、焦げることもない。この時豆によってはだいぶ煙が出るので報知器がならないように頑張ってほしい。この温度帯であればゆっくりと熱が入るので好みの色になるまで待っていれば良い。

これで完成だ。

 

③冷却

最後に何か風の出るもので冷やさなければならない。せっかく好みの焙煎度でやめたのにそれを通り過ぎてもっとも色づいてしまう。おすすめはドライヤーの冷風モードだが、ワイルドな人は扇風機やクーラーの風もいいかもしれない。しかしガソリンが好きなひとでもバイクの排気風はおすすめできない。熱風なのでいつまで経っても豆が冷めないからだ。

そういうわけで各自が好きなもので豆を完全に覚ましたら最後に密閉容器に入れる。この時すぐに蓋を閉めず、30分くらい待って締めるのがいいと思う。豆から出る機体がビンに閉じこもってしまうためだ。

 

④寝かしつけ

せっかく自分で焙煎したのだからすぐにでも飲みたい気持ちはわかるが飲む前に寝かせておかなくてはならない。試しに焙煎直後のものを飲んでみるといいが、なんだか経験したことのない不味さを感じるはずだ。なんとも表現しずらいが、彼女の前で空回りしていきっている人を見た時のあの感覚を下で感じたような味だ。なんだか危なっかしくて安定せず少し嫌な気分になる味といえば伝わるだろうか。とにかく苦労して煎った物とは思えないほどまずい。そこで3日ほど冷たくかつ暗居場所に置いておく。一般には3日で良いとされているが、個人的には1週間おいた状態が一番美味しく感じる。だが1週間後になって飲み始めては、全て消費する頃には劣化して不味くなってしまうから結局3日後に飲むのがベストだろう。

以上で美味しいコーヒーが出来上がる(はずだ)

 

最後に最近の個人的な小話を述べさせていただこう。半年ほど前エルサルバトルという国のコーヒー豆を買ったのだが私の舌に合わずずっと放置していた。当時はエルサルバトルという国が物珍しかったから買ってみたのだが、今ではその国への興味はとうに消え失せていた。しかし昼過ぎに米国のTIME誌を読んでいると半ページほどにわたってエルサルバトルのことが書かれていた。なんとビットコイン法定通貨にするそうで、馬鹿げていると思ったが調べてみると意外と理屈が通っているようだ。それでふと家にエルサルバトルのコーヒーがあることを思い出し、それで先程焙煎をしてみた。それからしまいにはグーグルアースで旅行気分も味わった。このようにコーヒーが好きだと一般にはあまり有名でないコーヒー生産国の位置を覚えたり、その国の時事にもなぜか親しみを感じたりする。地理や時事がめっぽう苦手なわたしには願ってもなかった幸運である。