竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

線形代数のまとめノートpart2(正則/逆行列/随伴行列/複素行列/ユニタリー行列/エルミット行列)

前回に引き続き、今回も行列の諸性質についてみていきます。今のところ非常にシンプルな内容ですから頑張ってささっと紹介いたします。

 

【目次】

 

 

正則と逆行列

ある行列AがAB=Eを満たすようなBがあるときそのBは一意に定まることを示します。そのためには、背理法を使うと、(背理法は全くもって必要ではないですが何となく使ってしまいました。)

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という仮定の下で、AB=Eを

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と変形できますからすぐさま矛盾が導かれて、Bの一意性は示せました。このことから、Aに対しBはもし定まるとすれば一通りと分かります。そこでBを

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と定めて、このようなBを

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と定めます。また逆行列が存在するような行列を正則行列といいます。(逆行列が存在しないことがあるのは零行列を思い出せばすぐに確認できます)

 

次に逆行列を用いた計算の性質を見ていきます。以降A,Bなどは正則行列とします。

まず始めに

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の成立を示します。これは転置行列においても言える等式ですね。前回の記事で詳しく扱いましたのでもし必要があればこちらからご覧ください。

これの証明は、まず逆行列の定義より、

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がわかります。一方で、

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のように計算できます。ここで行列ABに対する逆行列は一意に定まるので、(これは先ほど証明しましたね)結局、

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であると示せます。

 

次に示したいのは、

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です。またもや転置行列でも成り立つ式です。これを示すのはひとつ前の証明と構造的には同じです。

まず逆行列の定義から、

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が言えて、A⁻¹の逆行列については、

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が言えます。そしてA⁻¹の逆行列は一意に定まりますから、

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となり、証明完了です。

 

そしてこの節の最後に

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を示します。これまで転置行列の存在をちらつかせていましたがそれはこのように転置と逆行列のミックスが出てくるからという意図もございました。

こちらの証明も上の2つの証明と構造上は同じで、まずは

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が言えます。一方で、

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は左辺より単位行列Eに等しいですから、逆行列の一意性から、示したい式が出てきます。これで証明終了です。

 

ここで少し行列とは関係のない話をさせていだだきますので、お急ぎの方は次の節まで飛ばし読みしてくださると幸いです。

複素ぎゅれつと明を読むとその構造を一般性を高めて把握しておきたい癖がありまして、今回の非常にシンプルな証明も一応自分なりに構造分析すると以下のようになります。

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を示したいことだとして、逆行列の定義より、

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となります。一方で黒丸について頑張って

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であることを示します。そうすれば逆行列の一意性から示したい式が出てきます。

上の3つの証明は完全にこの形の特殊なバージョンでしかないとわかります。

まあ頑張って抽象化したとはいえ元の証明が証明ですからあまりありがたみがありません。しかしこのようなことを少々複雑な場合でもやってみると意外と定着に役立ったりしますので個人的におすすめであります。

話がそれましたが次の節に移ります

 

複素行列とその基本的性質

複素行列とはその名の通り成分が複素数の行列で、例えば、

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などがそうです。この各成分を複素共役にしたものを複素共役行列といい、Aの複素共役行列は

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になります。これに関して次の等式が成り立ちます。

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これらは行列の計算則と複素数についての項呼応数学の知識を用いれば示せますので割愛いたします。次に随伴行列というものを定めていくわけですが、まずは

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を確認します。このことは転置の図形的イメージと複素共役についての高校数学の知識ですぐに(厳密ではないかもしれませんが)できます想像からこちらも割愛します。

そうすると上の赤い四角の中の式においてカッコは外しても問題なくて、その外したものに対して

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という定義を行います。もしもAがただの実行列(成分がすべて実数の行列)であれば随伴行列は転置行列に等しくなります。

そして随伴行列についても以下のような基本的な等式が成立いたします。

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こちらも割愛したいところですが、「この証明は簡単であるから読者の課題とする」といって教えてくれない参考書となんら変わりなくなりますので一応載せておきます。

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そしてこの記事の最後に次のような式が成立する際のAの呼び名を紹介いたします。

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もしもAが実行列ならこれは対称行列になります。

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こちらについてはAが実行列ならこれは直行行列となります。

 

以上で今回はおしまいです。次回は行列式を解説し、それを用いて連立一次方程式を解いてみます。もしよろしければ次回もご覧ください。

 

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