竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

線形代数のまとめノートpart3(置換/差積/行列式)

今回のメインは行列式というものを定義することです。そのためにはまず置換というものを理解しなくてはなりません。順に見ていけば難しくはありませんから張り切っていきましょう。

 

【目次】

 

置換

まずは次のような一対一対応の写像を考えます。

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これはただある数kをakに変えるという意味です。この写像σの情報ははじめの数と後の数の対応のみからなりますから、

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という形で表せます。

このようにして定まる置換の中でとくに

 

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となるものを単位置換と呼びます。

置換の具体例として、

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を考えます。置換によって動かない数は別に表記しなくてもよいというルールがありますので、

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と表すこともできます。また各数の対応関係さえきちんと表せればよいので、

 

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と表しても大丈夫です。次に置換の逆元について考えます。

まず

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を作用させた後に後悔して、元に戻したくなったとします。そのようなときは

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という別の置換を行えばきちんと元に戻ることがわかります。つまり、

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の関係が成り立つのです。(ℇを単位置換とします)ここでσ⁻¹を逆置換と定めます。

次に巡回置換を紹介いたします。

巡回置換

巡回置換とは、

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のように、動かない数を省略した結果、置換後の数が元の数を一つずつ左にずらしたものとなる置換のことです。巡回置換の場合は置換の仕方は「置換後の数が元の数を一つずつ左にずらしたもの」というようにすでに決まっていますので、

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と表せば十分です。

ここで

「任意の置換は巡回置換を有限回繰り返すことで再現できる」・・・①

という定理をざっくり証明します。

まず任意の置換を

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と表します。まず1について考えます。σ(k₁)=1として、{1,2,3,、、、n}に巡回置換を繰り返し行うと有限回のうちにσ(k)=1が実現します。次に1を除く1からnの数の組において同様に巡回置換を行うと今度はσ(k₂)=2とできます。

このようの操作を繰り返せばやがてσを構成できますから、上の主張は示せました。

 

互換

巡回置換の中でも特に数が2つの場合を互換といいます。

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ここで互換について

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が成り立つことを確認しておきます。順に追っていくと、

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ですので確かに上式の成立を確認することができました。

このことと先ほど示した①より

「すべての置換は有限個の互換を繰り返し行うことで再現できる」・・②

ということがわかります。実はこれは後の行列式の定義を行う際にキーポイントとなります。

 

差積

いったんここで高校数学チックな証明を行います。まずは差積というものを紹介します。差積をΔとして、

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で定義します。そしてこれからこの差積が交代式(任意の2つの文字を交換すると符号だけ変化するが絶対値は変わらないような式)であることを示します。つまり、

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を示すのです。

証明方法は極めて単純で、

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のようにすべて書き出します。ここでAとEは互換を作用させても変化しませんからほかのパートのみ考えます。変化がある部分のみを抜き出して書くと、

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になりますので、

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となり、差積が交代式であることが示せました。

 

置換の符号

つぎに各々の置換に対して置換の符号というものを定めます。σの符号をsgn(σ)として、σがk個の互換を用いて表されるとすると、(②よりそのようなことはいつでも可能と分かります)

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であると定めるのです。

この定め方は本当に正しいのでしょうか以下ではこの定義の正当性を確かめます。

(いくら定義とはいえそれが正当であることが必要です。)

まず任意の置換σが互換を用いて

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のように2通りにかけたとします。この時σを差積に作用すると

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となりますからsとtの偶奇は同じであるとわかります。

ですからσに対してその符号は一意に定まることになり、この定義は正当であることが確かめられました。

(ちなみに以上の証明を見返してみると差積をわざわざ持ち出さなくても自分で勝手にn個の変数から成る交代式を作れば十分であると気づきます。ですから自分で交代式を変数が小さいものから順に作っていきますと、「x₁-x₂/(x₁-x₂)(x₁-x₃)(x₂-x₃)/・・・」となります。おっと、自分オリジナルのはずが結局差積になってしましましたね。思うに差積は交代式の中で人間が最も思い浮かべやすい式なのではないでしょうか。ですからこの証明の中で差積というのは突拍子もなく登場してきたのではなくて、一番自然な式として出てきたのだということができそうです。あるいは違う場面で交代式が欲しくなったら差積を思い出せばよいということもできそうです。)

そこで、この符号を用いて、

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というふうに偶置換と奇置換を定義します。

 

行列式

以上の準備をもとに行列式を定義します。行列式というのは正方行列に対して定義されるスカラー量で、

 

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行列式をdetAもしくは|A|と表記して、

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で定義します。これはつまり、考えられるすべての

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という置換に対して和を取りしかも各項の符号はσの符号に等しいとしているのです。

お察しの通りこれを実際に求めるのは3次行列なら簡単ですがそれより大きいものでは骨が折れます。

 

次回はこの行列式についてもう少し深堀していきますのでもしよろしければご覧ください。

 

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