わかりやすい解析力学part4(ポアソン括弧)
今回はポアソン括弧についていていきます。私自身物理を勉強中のみですからいまいちこの連載のゴールをどこに持っていけばよいのかわからないのですが、この次の記事で断熱変化を扱ってとりあえず終了しようかと思っております。
というのも、解析力学というのは現代物理学の基本をなしているようでして、あまり深入りしすぎると今度は量子論や天体力学などの別の分野のお話にすり替わってしまうように思えるのです。
勿論、このブログは学部レベルの物理学をすべて網羅することを目標としていますからいずれは扱っていく予定ではありますし、必要に応じて随時書き足していこうと考えております。
【目次】
ポアソン括弧について
任意の関数fとgに対して、(qは一般化座標でpはその共役運動量です。)
という演算を考えます。(上式はアインシュタインの縮約規則を用いています。ご存じでなければネットで調べてみてください。わかりやすいサイトがたくさんヒットします。)
これをポアソン括弧と呼ぶわけですが、ぱっと見では腑に落ちない点があります。それは右辺はpとqで偏微分するという情報が含まれているのに左辺ではその情報が抜け落ちているのです。
このような表し方が正しいことを言うには、(q、p)を正準変換した変数(P、Q)についてポアソン括弧をとっても結果は変わらないことを示せばよいでしょう。
これを示す前にひとつ、上式の1行目から2行目への変形が正しいことを確認します。まずxとXは前回同様
のように定めます。(Xについてはまだ登場しておりませんが後ほど出てきます。)
またJというのも前回登場ており、
という行列になるものです。
まずは1≦i≦n<j≦2nのケースでは、まずxを直すと、
であり、つぎにJの定義式にしたがって書き下ろすと、
です。同様に、1≦j≦n<i≦2nのケースでは、まずxを直すと、
であり、つぎにJ について書き下ろすと
です。そのほかのケースではJの定義からすべて0ですから、結局ポアソン括弧はいま求めた2式の和であり、これはポアソン括弧の定義式の1行目の表式と同じ値であるとわかります。
これで安心して、先ほど述べました「腑に落ちない点」の検証ができます。正準変換した変数を用いたポアソン括弧を変形していくと
となり、なんと正準変換する前の変数を用いたポアソン括弧に等しくなりました。(途中に出てきたδはクロネッカーのデルタです。)
ゆえにこの検証は以上であり、確かに先ほどのようなポアソン括弧の表記法に不備はないとわかります。
これを逆に言うと、「正準変換である」⇔「ポアソン括弧は不変」という関係もわかります。
ポアソン括弧の計算性質
次にポアソン括弧についての基本的な計算性質を述べてその後に証明をしていきます。ほとんどが単純ですのでテンポよく見ていきます。
反対称性
線形性
関数の積のケース
f=q、g=pのとき
次の証明は少し大変です。
ヤコビの恒等式が成り立つ
一般の二項演算に対して上式が成り立つとき、その演算はヤコビの恒等式を満たすと言われます。例えば足し算掛け算は当然満たしますし、一般相対論でアインシュタイン方程式を導出する際の手掛かりにもなります。
証明はいたって単純ですべて書き出していきます。まず第1項は、
ここで同じ色のアンダーラインを引いた項は形が似通っていますのでまとめて考えることにします。
まずは赤いアンダーバーの項は、
と表記すると(私が勝手に)定めて、ヤコビの恒等式第1~3項のうちでこの形のものをすべて寄せ集めると、
です。(第1項の計算結果を見るとすぐにわかります。)ここで、同じ色の項は相殺しますので、結局この値は0です。
同様に青いアンダーバーについては、
と表記するとして、
ですし、
オレンジのアンダーバーについても、
と表記すると
ですから、結局これらの和も0となり、証明が完了しました。
ポアソン括弧と運動の積分
最後に時間に陽に依存しない関数fを時間微分してみます。
となりますので、
がわかります。
以上でポアソン括弧については終了で、次回は一応の最終回として断熱変化を取り扱います。
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