竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

わかりやすい解析力学part2(正準変換/母関数/位相空間)

今回は前回導入したハミルトニアンを用いて正準変換、母関数、位相空間を紹介いたします。

 

【目次】

 

正準変換

ハミルトニアンは一般座標qと運動量pと時間tを変数に持つのでした。(言い忘れておりましたが、pのことをqの共役運動量と呼んだりします。)

まずは変数の組(q,p)を

 

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のように変換することを考えます。この変換はどんなものでもいいわけではなくて、

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のようにP,Qがp,qの関数として定まり、さらにある関数H'があって、

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を満たすように存在してることが条件とします。この条件を満たす変換を正準変換といいます。上式からQはPの共変運動量であり、H’は変数がPとQの新たなハミルトニアンであることが読み取れます。この変換によって具体的にはPがどのような形になるのかを知るためには母関数を用いた考え方が有効ですので、次はそれを見ていきます。

 

母関数

正準変換によって新しくなった変数でのラグランジアンをL’とすれば、ラグランジアンハミルトニアンルジャンドル変換であることより、

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と表されます。このとき、実際に実現する運動では作用が最小になるので、作用の変分は0となります。つまり、

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が成り立つのです。両者が同時に成り立つのはラグランジアンの差分がある関数の時間微分であるときですので、

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となる時間の関数fが存在すれば良いことになります。

実はこのfのことを母関数とよんでいて、①式から

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のような変数を持つとわかるので、その全微分は、

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になります。そして、この式と①式の各項を比較することで、

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という関係式を導き出せます。このことから、fが与えられたとき上式を用いることでP,Q,H’を求めることができるのだとわかります。

さらに、①式を変形すると、

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となります。ですから新たに

f₁(p,Q,t)=f(q,Q,t)-pq

とおいて、その全微分

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と見比べることで、

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というような関係式を導くことができます。このように、考えている母関数の変数に合わせて①式を変形してしまえば、正準変換を求めることができるのです。次に母関数を用いた例として以下の状況を考えます。

 

母関数の例:時間変化は正準変換であることを示す

以降しばらくはHは時間に陽にはよらないものとします。すると、H’=Hとなります。

そして時刻t₀における一般化座標とその共役運動量を時刻t₁における一般化座標とその共役運動量に変換することを考えます。つまり、

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という変換を行うのです。これが正準変換であることを示すには①式のような母関数の存在を言えばよいわけですが、実はこのケースの母関数はこの系の作用Sになります。実際に、

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より、

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ですから確かにこれは①式を

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に置き換えたものであるため、たしかにSは母関数です。

 

位相空間

母関数を用いると正準変換によって(q,p)→(p,‐q)とできることを確認できます。このことは、ハミルトン形式においてはpとqは同等に扱えることを示唆しており、pとqを軸にとった空間を考えることは不自然なことではないように思われます。このようにして考えるpとqによって張られる空間を位相空間といいます。(高校物理までで考えていた空間は配位空間といいます。)

 

一応具体例を見てみます。一般の場合では明らかに3次元空間を超えてしまいますから、ここでは一次元運動を見ていきます。この場合ですと空間はpとqの二次元で収まります。

 

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上図のような粒子の鉛直投げ上げ運動では、

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ですから、位相空間上でこの粒子は

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と表せます。ハミルトニアンが時間に陽に依存しないときはE=Hですからこの赤線上は

H=const.

となっていることもわかります。

 

以上で今回の内容は以上です。次回はいま導入した位相空間上で成り立っているリウヴィルの定理を導出し、またポアソン括弧という演算も考えます。

 

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