竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

流れがわかる流体力学part1(連続の式/オイラーによる運動方程式)

夏休みを生かして流体力学を勉強してみましたので、内容を忘れないうちにこちらにその解説をのせておくことにいたします。

 

【目次】

 

 

静止流体の圧力の性質と流体の定義

静止流体とは、その名の通り流体中のどこにおいても止まっている流体です。

 もしも、流体の粘性(粘っこさ)が0であれば、流体中に任意にとった仮想的な面の接線方向に働く力も0ですから、流体中に取った微小な三角錐に働く力は下図です。

(ただし、Pは面に働く単位面積当たりの力のうち、垂直成分のことを指し、これを圧力と呼びます。)

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このように、粘性が0である流体のことを完全流体といい、今後しばらくは完全流体を扱っていきます。粘性があるとその分難しくなってしまうためです。

赤い面に働く圧力由来の力の縦方向成分は

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となります。一方で、青い面への圧力由来の力の縦方向成分は、

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となります。縦方向にこの二つの力は釣り合いますので。(静止流体だから)

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という結論が得られます。これはつまり、流体のある点に働く圧力はその方向によらず一定であることを意味します。

私たちの多くは直感的に流体とそうでない物質を区別できますが、その境目はあやふやであります。そこで流体力学では、流体の定義を、「静止した状態において、その物質の一点に働く圧力が、その方向によらないもの」とします。これできちんと分別することができますね。

 

連続の式

流体は突然に何もない空間から湧き出したり吸い込まれたりすることはありません。少なくとも私たちが普段考えるようなケースではこれは明らかです。この事実を定式化したものが連続の式になりますが、以下ではこの式の導出を見ていきます。

まずは流体中に仮想的な閉曲面を取ります。これは時間によって変化しないものとします。この時、流体が単位時間あたりにどのくらい入ってくるのかを考えてみなす。まずは下図の黒い斜線で表した微小面に着目しましょう。

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拡大してみると下です。

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まず面に垂直な方向の、流体の速度成分は、

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となりますから、単位時間あたりにこの面から入ってくる流体の質量は、ρを密度として、

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よって、全体ではこれを面積分して、

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となります。

一方で、この閉曲面内の質量は密度を体積積分して、

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で得られますので、これの時間変化率は

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となります。今求めた二つの式は等しいですから、

(閉曲面内で質量が勝手に生まれたり消えたりすることはないので、質量の変化は閉曲面を通過して入ってくる流体のみを考慮すればよいためです。)

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となります。最後にまとめれば、

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となり、任意にとった閉曲面についてこれが言えますので、

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が言えます。この式を連続の式といいます。重要ですので覚えておくといいでしょう。

これは、任意の流体(完全流体でもそうでなくても)で成り立ちます。特に流体が非圧縮性の時は、ρ=const.となるので、

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となります。ここで、渦度ベクトルというものを速度ベクトル(流体力学ではこれを流速ベクトルといいます。)のローテーションで定めます。(これについては後ほどまた今度扱いますから今はそんなものがあるんだなぁと思うくらいで大丈夫です。)

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そして、渦度ベクトルが0であるときを’’渦なし’’といいます。

渦なしの時は渦度ベクトルの定義より、

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となりますから、流速ベクトルに対し、

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を満たすスカラーΦが存在します。このスカラーを速度ポテンシャルといい、渦なしの時のみ考えることができます。このことは、力学において力が保存力の時にポテンシャルエネルギーを下のように定めることができたことを思い出すと理解の助けになります。

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話がそれましたが、非圧縮性の流体の連続の式div(u)=0にu=gradΦを代入すると、

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つまり、

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がわかります。ここで∆はラプラシアンです。以上から、非圧縮性の流体で渦なしの時は速度ポテンシャルがラプラス方程式を満たすことがわかりました。

 

流体の運動方程式

流体の運動方程式の記述方法は2通り知られています。一つはオイラーの方法で、もう一方はラグランジュの方法です。ニュアンスとしては、

だと思っています。つまり、前者はある点においてとめどなく変わり続ける流体の様子を記述しますが、ラグランジュの方法はある流体の微小部分を時間が流れてもずっと追い続けて記述するのです。今回はオイラーの方法のみ見ていきます。流速ベクトルは、

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のように書くことができて、流体の加速度を知るには流体の微小部分の速度の時間変化率を知ればよいので、(x,y,z)は流体の流れに合わせて時間変化させます。すると、

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のようにtの関数になり、uの時間変化率は、

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で表されます。ここで(x,y,z)は流体の流れに合わせて動かしますから時間で微分すると、(u,v,w)となることを用いました。流速ベクトルのほかの成分についても同様で、これらをベクトルとしてまとめて書くと

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であります。この時間微分は、「(x,y,z)を流体の流れに合わせて動かす」という特殊なルールで行っていますから、

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のように、実質微分という名前が付けられています。

以上で加速度がわかったのであとは外力を考えるのみです。圧力については下図のようになり、そのほかに体積力が単位質量あたりXだけ働くとすれば、

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微小部分ΔxΔyΔzにおける運動方程式は、

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で与えられます。最後に、両辺をΔxΔyΔzで割れば、

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となり、運動方程式が求まりました。ここからさらに、

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というXのポテンシャルUと、

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で定義される圧力関数と呼ばれるものを用いれば、

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と書き直すことができます。これを流体力学における運動方程式として覚えておくとよいと思います。

 

以上で今回は終わります。次回はベルヌーイの定理などを見ていこうと思いますので、よかったらご覧ください。

 

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