竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

流れがわかる流体力学part3(速度ポテンシャルの例)

今回は速度ポテンシャルを具体的に提示し、それが表す流体の流れを見ていきます。

ここで出てくる流体はすべて非圧縮性(縮まない流体)の完全流体(粘性0)です。

 

【目次】

 

等速一様な流れ

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という速度ポテンシャルを考えてみます。これはラプラス方程式f:id:Hannak:20210829152627p:plain

を満たすことはすぐにわかります。さらに、流速を知るためにはこれの勾配を取ればよいのでした。実際に計算すると、

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となりこれは(a,b,c)方向への一様な流れであるとわかります。

 

湧き出し/吸い込み

次は

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という速度ポテンシャルを見てみます。まずはこれが本当にラプラス方程式を満たすことを確かめます。微分すると、

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もう一度微分すると、

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ほかの成分についても同様にして、これらを足し合わせると、

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となり、確かにラプラス方程式は満たされます。

次にこの速度ポテンシャルがどのような流れを表すのかを見ていきます。r方向(動径方向)への流速はポテンシャルをrで微分して、

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となりますので、’原点を中心とする半径rの球’から出てくる流体の体積は、

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となります。すなわちmは原点にある沸き出し口から出てくる流体の量を表しており、正の値なら沸き出し、負の値なら吸い込みを表すことになります。

 

湧き出しが2つあるケース

最後に、湧き出し口が近くに2つある場合を考えます。ちょうど下図のような場合になります。

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右側の湧き出しはΦ=m/rで、左側の湧き出しはΦ=-m/rであるとします。その二つの距離はあとで限りなく近づけるものとしますので、適当に近似を交えて式変形していきます。

速度ポテンシャルは重ね合わせることができますので

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となります。最後の極限は、mdrを一定としながらもdr→0としています。

こちらのポテンシャルの使い道はつぎの章で紹介いたします。

 

静止した流体中を球が動くケース

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ちょうど上図のようなケースです。球の中心を原点として考えます。

このとき、球に接している流体の速度は球面と同じだけの速度を持ちますので、

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上図のようにVcosθの流速になります。この速度は前節で求めた速度ポテンシャルから得られそうですね。実際にやってみると、前節の速度ポテンシャルをrで偏微分して、

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となりまして、さらにr=aにおける速度は①にr=aを代入すればよく、これがVcosθに一致するように係数を決めていきます。

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となりますから、結局このケースの速度ポテンシャルは、

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となります。

 

静止した球の周りを流れる流体

最後に下図のように球の周りを流体が流れる場合の速度ポテンシャルについて考えていきます。

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このケースは下図のように、流体中を球が左へ動いているような水槽全体に速度Vを与えた場合と同値ですので、

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前節の速度ポテンシャルでV→-Vと置き換えたものと、等速一様な流れの場合の速度ポテンシャルを足し合わせれば再現できます。(力学の時に力の足し合わせはポテンシャルエネルギーの足し合わせでまかなえたように、流体力学における速度の足し合わせは速度ポテンシャルの足し合わせを行えばオッケーなのです。)

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少しまとめれば、

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という表式になります。

 

以上で代表的な速度ポテンシャルはおおよそすべて紹介できました。次回はこれを用いてダランベールの背理という一風変わった事実を紹介する予定でございます。

 

 

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