流れがわかる流体力学part4(ダランベールの背理/流体中を加速度運動する球)
今回は前回までのコラムで導き出した、速度ポテンシャルとベルヌーイの定理を用いて一つ興味深いことを導いてみます。
まずは今回のテーマですが、水中を球体が直線運動する場合に、その球に働く力がいかほどであるか計算していきます。図にすると、ちょうど下です。
時刻tにおける球の中心をx=s(t)として、球の半径をa,球の速度をV(t)とします。このときの速度ポテンシャルは、前回の内容を用いれば、
となることがわかります。変数間のもろもろの関係式は、
となっております。これを代入すると、
これをベルヌーイの定理:
に代入していきます。(球に働く力を求めるには球表面における圧力さえわかればよいからです。)速度ポテンシャルの時間偏微分は、
これに、r=aを代入して、
一方速度ポテンシャルのxによる偏微分は、
yによる偏微分は、
zによる偏微分は、yの時と同様で、
以上を用いて流速の2乗を求めると、
以上の計算結果をベルヌーイの定理に代入して圧力Pを用いますと、
になります。次にこの圧力を用いて球に働く力を求めていきます。
圧力のx成分は、Pcosθで、それ以外はx軸対象で打ち消しあうので考えません。
となります。以上によって、球に働く力は、
であることがわかりました。
ここで特に球の加速度を0とすると、F(t)=0であることがわかります。(これをダランベールの背理といいます。)これはどういうことかというと、流体中を等速直線運動する球体には力が働かないというのです。実際にお風呂かなんかで確かめればすぐにわかるように、このような現象は実際には見られません。それは、今まで考えていた系には粘性がありませんでしたが実際には粘性があるというのが主な理由です。
今回は少し短いですがここで終わります。次回は複素速度ポテンシャルなどを導入しようと思いますのでどうぞご覧ください。
次回
(準備中)
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