竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

ルベーグ積分part1(ルベーグ測度/可測集合の直感的な導入)

今回から何回かにかけてルベーグ積分を扱っていきます。なかなか難しい内容ですのでまずは直感的な説明を行い、次回以降その詳細や証明を見ていこうと思います。

 

【目次】

 

ジョルダン測度の考え方

ルベーグ積分の前にまず、ジョルダン測度の考え方をざっと見ていきます。(リーマン積分という高校で習った積分ジョルダン測度の考えに基づいています。)

下図のような赤い部分(集合Sとします。)の面積を求めたいとき、ジョルダン測度の考え方にのっとると、この図形を’有限個の長方形の面積の和’で近似していくことになります。

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のように長方形をI(アイ)で表すとして、その面積(| I |とする。)は小学校で習った公式を思い出すと、

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であります。このような長方形のうちSに含まれるものだけを集めて、面積の和を取れば、Sの面積の大まかな近似になりまして、

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になります。このときの長方形の取り方をいろいろに工夫してみると、上式の値は様々に変わるでしょう。このようにしてできる様々な値の上限を

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のように※付きで表し、ジョルダン内測度と呼びます。定義の仕方よりジョルダン内測度は’’実際の面積’’より大きくなることはないでしょう。(なぜなら、Sに完全に含まれている長方形の面積の和を考えているからです。)

次に’’実際の面積’’より少し大きめに見積もったものも考えます。そのためには、大盤振る舞いにSと少しでも共通部分を持った長方形をすべて足し合わせてしまえばよいでしょう。式にすると下です。

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これはいくらでも大きくはなりますが、下には有界で、その下限を

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のような下付きの※を用いて表し、ジョルダン外測度と呼びます。

もしも、小さめに見積もったジョルダン内測度と大きめに見積もったジョルダン外測度が一致すれば、この見積もりは’’正しい’’ことになり、

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として、ここで求めた内測度か外測度のどちらかを(両方等しいのでどっちでもいいのですが)Sの面積とすればよいでしょう。

以上がジョルダン測度のおおよその考え方です。しかしこの考え方には欠点があり、例えば図形の内部に可算無限(無限だが数えられる量です。例えば自然数。)個の穴がまんべんなく偏在していればジョルダン内測度は0となってしまい、外測度は0以外の有限の値になってしまうので面積は定義できなくなってしまいます。その欠点を解消する考え方がルベーグ測度です。以降はルベーグ測度についてみていきましょう。

 

ルベーグ測度の考え方

まず、前節の最初の段階で図形を有限個の長方形で近似したかと思いますが、今回は近似の精度を上げるため使う長方形を可算無限個に増やします。そして、下図のように図形を覆ってしまいます。(絵では可算無限個は表現できないため有限個になっておりますがご勘弁を。)

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そして、作った長方形のうち、Sと少しでも共通部分を持つものの面積ををすべて足し合わせていきます。(つまりちょっと大きめに値を計算するのです。)そして、ジョルダン測度の場合と同様にこれの下限を取ってみます。

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これをルベーグ外測度といいます。

この調子でルベーグ内測度も定めたいところですが、この方法を愚直に内測度にも適用していくとジョルダン測度の欠点を引き継いでしまいます。そこで、「図形の内部から面積を求めていく」のはあきらめて、「Sの外枠の面積(下図で赤色の部分)をやや大きめに求めて、長方形の面積から引く」ことでSの小さめな面積を求めていきます。

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この赤い外枠の面積を大きめに求めるには、この部分の外測度を求めればよいでしょう。

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そして、長方形の面積から外測度m*を引いた値を内測度として、上式のように定めます。以上で内測度と外測度がわかりました。そうしましたら、ジョルダン測度の時と同様に、内測度と外測度が一致するときが面積を上手く求めたということになります。そして、この値をルベーグ測度といい、Sの面積になります。

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のように、内測度=外測度という条件は、上の黒く囲った式がSを完全に含む任意の長方形Iについて成り立つときであると言えます。

そして、ルベーグ外測度(今後外測度といったときはルベーグ外測度のこととします)は

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という性質を満たしてくれます。証明したいところですが今回は直感性に重きを置きたいので割愛します。

以上によってルベーグ測度の導入が済んだのですが、実はカラテオドリさんによって、

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が上で導出した「外測度=内測度」であるための必要十分条件であることが証明されております。上式において「長方形の面積は’’縦×横’’」という小学校の先生が言っていた謎の決まりは使わずに済みますので、むしろこちらを外測度=内測度となる条件式として定義するべきです。そしてこの条件を満たしてくれる集合Sを可測集合と定義します。

 

今回は以上で終わりとします。次回はざっくりとルベーグ積分を導出し、その次の回からはいよいよある程度の厳密性を保ちつつもわかりやすいようにルベーグ積分の解説を始めていきたいと思います。どうぞ引き続きご覧ください。

 

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