竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

【読めばわかる一般相対論part13】水星の近日点移動

今回は一般相対論の検証となる現象として有名な水星の近日点移動を取り扱っていきます。水星の近日点移動というのはその名の通り水星の近日点がどんどんとずれて移動していくことですが、その移動の要因としては大半が地球の自転軸のぶれによるもので、後の要因は水星の周囲の惑星からの引力であるということがわかっています。

 しかし、この二つの要因から導き出される計算結果は実際の近日点移動よりも値がすこしばかり小さく、第3の要因があるのではないかと考えざるを得ません。

 実は、その第3の要因というのが一般相対論的な効果なのです。本稿ではこのことについてみていきます。

 

【目次】

 

水星の近日点移動とは

まずは水星の近日点移動とはなにかを簡潔に述べますと、それはつまり水星の近日点が下図のように、少しずつ回転していく現象のことです。

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高校では惑星の軌道は左のような楕円であると習いましたが、実際には右のように動いているのです。(上の図はかなり誇張しています。)

 

相対論的効果による水星の近日点移動

太陽を球対称静的質量分布とみなせばシュワルツシルト計量を考えることで現象を解くことができます。

シュワルツシルト計量は

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と表せました。(太陽の質量をMとしています。)

一般に計量テンソルと線素は

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という関係にあります。ですから、シュワルツシルト解より、

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が計量テンソルであるとわかります。

今回は水星は重力の作用しか受けないので一般相対論においては外力0となります。(一般相対論において重力の効果は時空間のゆがみに含まれるからです。)

ですから、ニュートン力学運動方程式の相対論バージョンである、測地線の方程式は、

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となり、今後はこれを考えていけばよさそうです。計算を楽にするために、この現象がθ=π/2なる面上で起こるとすると、θ=π/2をシュワルツシルト解に代入して、

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となります。

そして、測地線の方程式を求めていくためにクリストフェル記号(上式のΓ)を求めていきます。クリストフェル記号は、

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で定まっていますので、丁寧に計算していくと、まずはi=0のときについて、

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なので、(j,k)=(0,1), (1,0)以外は0となり、

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となります。よって、

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となり、すなわち、

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という保存量をえました。この調子でi=3のときも考えていくと、

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なので、(j,k)=(1,3), (3,1)の時以外は0であり、

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になりますので、測地線の方程式は、

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と変形できます。よって、

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になります。以上で求めた二つの保存量αとβを用いて、シュワルツシルト解を変形していくと、

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となります。ここでの計算は、(万有引力運動方程式から楕円軌道を導くときのように)rとφの関係式に持っていこうという気持ちでやっていきます。上の式を少し整理していくと、

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になります。そしてこれをφで微分することでシンプルな式を得ます。:

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これが水星の軌道が満たすべき式になりますがまともに解こうとするとかなり大変ですので(そもそも解くことができないように思えます。)近似を2段階に分けて行っていきます。

【最初の近似】rは太陽から水星までの距離とは違いますが、太陽から水星までの距離と同じように、rなどと比べるとかなり大きいことは確かです。そこで①の右辺第三項を無視するという近似を行うと、

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となりこれの解は、単振動と同様にして

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になることが分かります。

【第二の近似】このままだとただの楕円軌道のままですから、そこで実際には余弦の位相がφではなく、δφだったとします。(このδによって近日点移動の分を表そうという算段です)

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式にするとちょうど上のようになります。これを①に再び代入して、δを求めていきます。

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上式において、余弦の係数を見比べると、

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と計算されますから、余弦の位相がちょうど2πだけ変化するのは、

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となるときです。これはつまり、

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であることをしめしており、つまり水星の近日点移動は一周するたびにGM/lc²だけずれます。

 実はこの式に実際の値を代入すると、本稿の初めに述べた水星の近日点移動のうち原因がわかっていなかった分の数値にぴたりと一致します。このことから、この現象は一般相対論の正当性を示すものの一つとして非常に有名であるのです。

 

以上が水星の近日点移動の一般相対論的効果の内容です。これで「読めばわかる一般相対論」と題したシリーズでの相対論の解説は終わりになりますが、ほかにも重力波宇宙論などの応用的な内容についても今後別の機会に見ていこうと思います。

 

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