竜田揚助の数理科学解説所

数学、物理、について書いてます。

流れがわかる流体力学part6(複素速度ポテンシャルの導入と具体例)

今回は、前回までで見てきた速度ポテンシャルと流れ関数を組み合わせて、複素速度ポテンシャルというものを定めます。そして複素速度ポテンシャルに具体的な関数を与えることで、様々な流れを見ていくことにいたします。

【目次】

 

複素速度ポテンシャルの導入

複素速度ポテンシャルとは、速度ポテンシャルΦと流れ関数ψを用いて、

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と定義される関数のことです。この関数は、速度ポテンシャルと流れ関数の性質より、

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という式を満たしますが、これは複素解析で出てくるコーシー・リーマンの方程式にほかなりません。複素解析によると、複素関数wがコーシー・リーマンの方程式を満たすというのは、wが正則であるということと同値であり、

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をzで微分した結果は、xで微分した結果に一致するという事実が知られています。

ここで述べた複素解析の知識は、過去の記事に簡潔に述べられてますので必要に応じてご覧ください。(複素微分(コーシーリーマン方程式/複素偏微分))

今述べた正則関数の性質から、

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と計算されるので、実部と虚部を比べて、

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がわかります。この式は、複素速度ポテンシャルから流速ベクトルの情報を引き出すことができることを言っています。ですので複素速度ポテンシャルが与えられれば微分することで流速ベクトルがわかり、流体の流れを知ることができます。そこで次節では具体的な関数を与えて流れを求めていくことにします。

 

複素速度ポテンシャルの具体例

本コラム第3回で、基本的な流れを表す速度ポテンシャルを具体的に見ましたが、今回はそこで扱った具体例を、複素速度ポテンシャルの場合に拡張していきます。

 

一様流れ

流体が一様に流れていく様子を表す複素速度ポテンシャルは、

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です。実際に計算してみると、流速ベクトルは

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となっていますので、確かにこれは(a,b)方向へ一様に流れる流体を表しています。

 

 

 

十字のついたてがある場合の流れ

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上図のようにx軸y軸と位置する十字のついたてがある系の流れを表す複素速度ポテンシャルは、

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です。実際に微分してみると、

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となりますから、流速ベクトルのx成分,y成分は、

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となり、これを整理すると下のような微分方程式になります。

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上の第二式より、

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というのが、流線の方程式なので確かに上図の流れをきちんと表していそうです。

 

湧き出し

原点にある湧き出し口から放射状に流体が流れ出てくる場合の複素速度ポテンシャルは、

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です。今回も実際に微分してみると、

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となりますので、半径rの円から出てくる流体の総量は、

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になり、mは流体が出てくる量を示すパラメータになっていてこれが正なら湧き出しで負なら吸い込みです。この時の流れを図にすると下のような感じでしょうか。

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二重湧き出し

上で考えた湧き出し吸い込みを下図のように二つ用意してみます。

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この時の複素速度ポテンシャルは湧き出しの複素速度ポテンシャルを二つ足し合わせて、

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と計算されます。このとき、吸い込み口と湧き出し口が非常に近いとして近似を二か所にわたって行いました。詳細は上の赤い字を見てみてください。

そして、

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というふうな極限を取ると、

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であることが分かります。速度ポテンシャルでこの式に対応するものは流体中を動く球が作り出した流れを求めるときに活躍したように、この複素速度ポテンシャルは後で同様の活躍をしてくれます。

 

湧き出しの流速ベクトルを一斉に90°だけ回転させると渦を巻いて回転することが分かると思います。このことを式の上で表現するには、複素速度ポテンシャルにi(虚数単位)を掛け合わせて、

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とすれば良いです。実際に微分してみると、

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となりまして、これを座標に書き込むと、

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となり、図中のように動径方向成分とそれに直行する成分とに分けることで、流体は円周を反時計回りに回転していることが分かります。上図によると、その流体の速度は、m/rであり、これを一周にわたって周回積分すると、

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であります。ここで最後のΓは、一般のに

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で定義され、循環と呼ばれています。渦の強さを表す量だととらえるとよいでしょう。

二つ上の式からmを循環を用いて表すと、

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となり、これを用いて初めの式を書き換えると、

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となります。

これが渦を表す複素速度ポテンシャルで、原点以外の点では

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のように渦度は0ですから、たしかに速度ポテンシャルΦを定義することができます。

(このように一部分に渦があっても渦度0の場所を考える限りは速度ポテンシャルを定義できますから、複素速度ポテンシャルを使って議論を進めることが可能なのです)

 

以上でざっと具体例を見終えました。次回はこれを用いてマグナス効果を見ていきます。マグナス効果といえば野球の変化球でしょうか。

 

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