【簡単な量子力学】part3 波動関数の導入と確率解釈
今回は量子力学の分野で有名な波動関数というものを導入し、それに存在確率の概念を付加していきます。
【目次】
測定と固有ケット
前々回の記事(簡単な量子力学part1)で基本原理を紹介した際に「我々が観測によって、知ることができるのは観測可能量を表す演算子の固有値だけである」といった趣旨のことを述べました。これはつまり、ある物理状態を表している状態ケットは、観測可能量を観測することによって、固有ケットに移ってしまうということになります。ちなみに、いくつもある固有ケットのうち実際に移るのはどれなのかは確率に支配されています。
イメージ的には、
という風に飛び移ると解釈すると良きです。
確率解釈
ここで、観測可能量をA, その固有ケットの一つを|a'>, 状態ケットを|α>として、
という複素数の数を定めます。これはa'によって値が変わりますな。こうして定まる関数ψ(a')を波動関数と呼びます。
さらに波動関数の大きさの二乗をρで表し、確率密度と呼びます。
この関数を確立密度と呼ぶというというよりかは、
「ψ*(a')ψ(a')は観測可能量Aの観測の結果がa'である確率である」
ということをひとつ量子力学の基本原理とする方が正確です。
観測可能量の期待値(平均値)
いま、観測可能量Aに状態ケットと状態ブラを掛け合わせたものを考えてみます。計算していくと、
のようになります。この式は'固有値にその固有値が観測される確率を掛け合わせたもの'を足し合わせていますので、まさに観測可能量Aの期待値(あるいは平均値)を表しております。
状態ケットの規格化
part1の記事で紹介した基本原理で、「状態ケットはスカラー倍しても同じ物理状態を表す」といった趣旨のものがありました。そのため状態ケットの大きさは任意で良いと述べましたが、波動関数に対して確率解釈の概念を当てはめるには
を満たしていなくてはなりません。このとき、実際に
のようになりますので、「確率の総計は1」という確率論の規則にあっています。
一方で、<α|α>≠1であればΣρ(a')≠1となってしまい確率の総計が1ではなくなります。これでは確率解釈ができませんので、この場合は不都合です。
これらの事情から、確率解釈を可能とするには<α|α>=1であることが条件になるのです。
以上によって、量子力学に確立の考え方と期待値の求め方を導入することができました。次回はいよいよ具体的に演算子を求めてシュレーディンガーの波動方程式の導出につなげていきたいと思います。
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